トヨタの仮想人体モデルに新バージョン、姿勢変化と骨や内臓の障害を同時解析:設計開発ツール
トヨタ自動車は2019年2月8日、衝突事故発生時の乗員や歩行者を再現するバーチャル人体モデル「THUMS」を改良し、バージョン6として発売したと発表した。最新バージョンでは、乗員の姿勢変化と、衝突時の骨や内臓の傷害を同時に解析することが可能になった。JSOLと日本イーエスアイを通じて販売する。
トヨタ自動車は2019年2月8日、衝突事故発生時の乗員や歩行者を再現するバーチャル人体モデル「THUMS(※1)」を改良し、バージョン6として発売したと発表した。最新バージョンでは、乗員の姿勢変化と、衝突時の骨や内臓の傷害を同時に解析することが可能になった。JSOLと日本イーエスアイを通じて販売する。
(※1)Total HUman Model for Safety。有限要素モデル。
衝突安全実験には一般にダミー人形が使用されるが、衝突による脳や内臓などの損傷を詳細に分析することが難しい。THUMSは2000年にバージョン1を発表した。全身だけでなく、顔面や脳、内蔵、筋肉などをCTスキャンのデータを基に精密にモデル化。身長や年齢による体の大きさの違いを反映したモデルも充実させてきた。より現実の衝突事故に近い条件でシートベルトやエアバッグの乗員保護性能や、自動ブレーキなど予防安全技術の効果を検証することが可能になる。
これまでTHUMSは、衝突前の筋肉の状態を考慮しながら衝突による乗員の姿勢変化を模擬するバージョン5と、骨や内臓に起きる傷害を解析するバージョン4に分かれており、2つを切り替えて使う必要があった。バージョン6では、この切り替えを不要とすることで、作業効率を高める。
今後、運転支援システムの普及や自動運転技術の導入に伴って、リラックスした体勢をとるなど衝突時の乗員の姿勢はさまざまであることが考えられるという。多様な状況下での乗員保護に向けた安全技術の開発で新バージョンの需要を見込む。
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