仮想人体モデルに筋肉が付くともっとドライバーに優しい自動ブレーキを作れる?:設計開発ツール
トヨタ自動車は、衝突事故における人体傷害の解析に利用できるバーチャル人体モデル「THUMS(サムス)」の新バージョン「THUMS Version 5」を発表した。人の身構え状態から脱力状態までを模擬可能な筋肉モデルを追加したことを特徴とする。
トヨタ自動車は2015年6月26日、衝突事故における人体傷害の解析に利用できるバーチャル人体モデル「THUMS(サムス)」の新バージョン「THUMS Version 5」を発表した。人の身構え状態から脱力状態までを模擬可能な筋肉モデルを追加したことを特徴とする。
事故時には、約半数のドライバーが急ブレーキや操舵などで回避行動するという調査結果が出ている。特に、急ブレーキを踏むと乗員は身構えるため、事故前後で脱力した状態とは姿勢変化の大きさが異なる。
従来バージョンのTHUMSでは、衝突後の姿勢変化は模擬できたが、衝突前の状態は模擬できなかった。筋肉モデルを追加したTHUMS Version 5では、衝突前の身構え状態も含めた乗員の姿勢変化を模擬することが可能になっている。
これによって、より現実の事故に近い条件シートベルトやエアバッグなどの安全装備の効果を検証可能になる。また、自動ブレーキに代表される予防安全技術の効果をより高い精度で予測できるので、乗員保護効果をさらに向上させた予防安全技術の開発を促進する効果も得られる。
THUMSは、人体の形状はもとより骨や皮膚に至るまで、身体各部位の特性を模擬することにより、車両衝突時の骨折/靭帯断裂などの詳細な解析を可能とするバーチャル人体モデルである。1997年から豊田中央研究所とトヨタ自動車で共同開発を始め、2000年にVersion 1の販売を開始。2004年には、顔面/骨を精密にモデル化したVersion 2、2006年に脳を精密にモデル化したVersion 3、2010年に内臓を精密にモデル化したVersion 4とバージョンアップを続けてきた。
これまでTHUMSは、国内外の自動車メーカーや部品メーカーなど数十社が採用し、衝突事故における乗員や歩行者の傷害の解析に使用している。「当社だけでなく、世界中のクルマの安全技術研究に貢献している」(トヨタ自動車)という。なお今回のVersion 5は、JSOLと日本イーエスアイを通じて販売する。
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