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自動ブレーキも横滑り防止装置も、ドライブバイワイヤあってのものだねいまさら聞けない 電装部品入門(11)(1/4 ページ)

電子制御によってアクセルペダルの踏み込み具合とスロットルバルブの開度を連携させるドライブバイワイヤ(Drive-By-Wire、DBW)システム。今回は、DBWシステムの動作の安全性を確保する仕組みや、自動車の進化を支えるDBWシステムのメリットを紹介する。

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いまさら聞けない 電装部品入門

 前回は、吸気系統や従来のケーブル式スロットルバルブ機構に関する基礎解説を踏まえた上で、電子制御によってアクセルペダルの踏み込み具合とスロットルバルブの開度を連携させるドライブバイワイヤ(Drive-By-Wire、DBW)システムが必要になってきた背景を説明しました。

 今回は、DBWシステムの安全性を確保する仕組みや、自動車の進化を支えてくれているDBWシステムのメリットを紹介しましょう。


アクセルポジションセンサー

 アクセルポジションセンサーには、アクセルペダルの踏み込み量と踏み込み速度を検出するホールICが2個(APS1/APS2)独立して組み込まれています。

 2個のホールICは、それぞれ出力特性が異なり、同じアクセル開度を検出しても出力される電圧値が異なります。

アクセルポジションセンサーの回路図と出力特性の例
アクセルポジションセンサーの回路図と出力特性の例

 これらの出力値をCPUは記憶しており、双方の電圧値が正しい関係性で出力されているかを常に監視しています。

 例えば、実アクセル開度が20%のときの出力値が「APS1=0.8V/APS2=1.4V」であるアクセルポジションセンサーが組み込まれているとします。

 当然ですが、CPUが「APS1=0.8V/APS2=1.4V」という出力値をアクセルポジションセンサーから受信すると、「現在の実アクセル開度は20%だ!」と判断して、アクセル開度情報を関連部品へ伝達します。

 しかし、「APS1=0.8V/APS2=1.8V」といった本来存在しない出力パターンを受信すると、2個あるホールICのいずれかが故障していると判断し、安全確保のためにCPUはDBWシステムの機能を停止させます(故障判定回路が組み込まれていますので、異常箇所を具体的に特定できます)。*1)

*1)機能停止後のフェイルセーフアクションは後述します。

 もちろん、外的な電波障害や磁力などによってホールICの出力が変化する場合、電圧値の関係性が一時的に合致することもあり得ますが、もともとCPUが記憶している関係性を満たし続けなければ、アクセルポジションセンサーからの出力として認められません(CPUが定めている一定時間を超えて誤信号を受信した時点で、DBWシステムの機能は強制停止します)。

 つまり、外的な要因でホールICの出力が変化しても、その誤った出力によってスロットルバルブが駆動されて、ドライバーの意思と異なるスロットルバルブ開度になってしまうような事態は現実的には起こり得ないということになります。

 ただし、異物の噛み込みに代表される、物理的にスロットルバルブが開状態で保持されるような問題では、DBWシステムを強制停止してもスロットルバルブは開いたままになります。とはいうものの、吸気系統には非常に目が細かいエアクリーナーエレメントが入り口に装備されているので、人為的な作業ミスなどがない限り、スロットルバルブが開状態で保持されるような大きな異物が混入することは起こらないでしょう。

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