工場内でつながっている機器を一括把握、産業用ネットワークで2社が協業:産業用ネットワーク技術解説
端子台メーカーであるフエニックス・コンタクトとネットワークベンダーであるアラクサラネットワークスは、工場用ネットワーク分野で協業し、工場内でネットワークに接続された機器を一元的に把握し管理できるソフトウェア製品「AX-Security-Controller(AX-SC)」を共同で展開することを明らかにした。
フエニックス・コンタクトとアラクサラネットワークスは、工場用ネットワーク分野で協業し、工場内でネットワークに接続された機器を一元的に把握し管理できるソフトウェア製品「AX-Security-Controller(AX-SC)」を共同で展開することを明らかにした。
スマートファクトリー化で浮き彫りになる工場ネットワークの問題
工場内でもIoT(モノのインターネット)をはじめとした先進のデジタル技術を活用するスマートファクトリー化への動きが広がりを見せている。その中で再注目を集めているのが工場内ネットワークである。さまざまな機器のデータを収集し、その活用による生産性の向上を目指す中で、必要となるものだからだ。
フエニックス・コンタクトは端子台など産業用接続機器を展開し、工場および工場で使用する機械設備メーカーに関する知見と関係性を持つことが強みだ。一方で、アラクサラネットワークスはネットワーク機器ベンダーで、ネットワーク制御に知見を持つ。
フエニックス・コンタクト IMA統括本部 本部長の横見光氏は「スマート工場化で工場全体の機器をネットワークで結び一元的に管理するような動きが広がり、当社にも顧客からそういう要望を受けることが多くなってきていた。しかし、機器単位や1つのラインレベルなどPLC(Programmable Logic Controller)で管理する単位のネットワークであれば何とか対応可能だが、工場全体などのレベルのネットワークになると当社では手に負えない。規模の大きなネットワークのノウハウを持った専門企業と組む必要性について感じていた」と協業の動機について語る。
一方で、アラクサラネットワークスにとっても協業は補完関係になるという。「産業向けのネットワークに可能性を感じ、ヒアリングを進めて製品そのものは作ったが、具体的に工場内の機器やネットワーク、重要視するポイントなどについての知見がなく提案をしあぐねていた」とアラクサラネットワークス 経営戦略本部 事業戦略部 市場戦略G マネージャの阪田善彦氏は述べている。その中で、フエニックス・コンタクトと出会い、それぞれの強みを生かした協業関係が構築できることから、共同提案を進める話になったという。
ネットワークにつながる機器を一元把握できる「AX-SC」
今回共同展開を行う「AX-SC」はアラクサラネットワークスが開発したソフトウェア製品である。産業用PCやサーバなどネットワークに接続可能なハードウェアにインストールして使用する。そのハードウェアをネットワークインフラに接続し管理するスイッチを登録するだけで、イーサネットベースであれば、接続機器の情報をネットワーク経由で収集することが可能となる。既存の生産設備やネットワーク設備に手を入れる必要がなく、工場稼働に影響を与えることなく接続機器の把握と管理が行えるようになることが利点だ。
アラクサラネットワーク 経営戦略本部 事業戦略部 ソリューション戦略G GLで主任技師の矢野大機氏は「工場で実際に提案に回ると、ネットワークをどう構築するかやセキュリティをどう確保するかという前に『どういう機器がどれだけつながっているのか分からない』という現状把握に苦しんでいるケースが多いことに気付いた。これをまず簡単に実現できるようにすることが重要だと考えた」と製品のポイントについて語っている。
これらにより、端末が接続されている装置、ポート、VLANなどを一覧で表示できる。トポロジーマップとして確認することも可能で、全体像を直感的な視点で確認ができる点も製造現場向けだといえる。
イーサネットベースでIPアドレスの重複がなければ、基本的には工場のネットワーク接続機器を1台で把握および管理することも可能だという。ただ、EtherCATやCC-Link IE Fieldなど、イーサネットベースでもカスタマイズを施しているものでは、機器情報を直接取れない場合もある。フエニックス・コンタクト IMA統括本部 マーケティング部 テクニカルスペシャリストの軽部幸久氏は「基本的には産業用ネットワーク以上の領域のデータを集めるのがベースで、それ以下の領域の情報を収集する場合は専用の拡張ボードを使えば取得できる」と述べている。
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