「ちょっと違う板金屋」と「かなり頼れる電源屋」が合わさると何ができるのか:製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)
OKIグループで2020年4月1日から新スタートを切ったのが「OKIシンフォテック」である。同社の新しい代表取締役社長となった馬田宗明氏に狙いと今後の方向性について話を聞いた。
得意領域に特化した産業用カスタム電源事業
一方、カスタム電源事業は、一貫生産は板金事業と同様だが、得意領域を絞り込み、その中での対応力を強みとして事業を伸ばしてきた。得意領域として、交流から直流への変換を行う電源部品を対象とし、さらに50〜2kWの領域に絞り込み、数量的にもロット数が100〜500個くらいの領域を狙ったという。結果として、半導体製造装置やFA機器、業務用通信機器、交通関連機器、医療機器、金融端末などの電源を主軸として現在展開している(※)。
(※)関連記事:“選球眼”でヒット率向上、“全員野球”で2割成長を持続するOKI電源工場
これらの領域の中で、回路、基板、板金、ファームウェアをワンストップ設計することで、付加価値を高めたソリューション提案を進めている。
板金事業と電源事業のシナジーをどう作るか
OKIシンフォテックでは、これらの2つの事業が個別の運営をする中で、両事業を組み合わせ、シナジー効果を生み出すために誕生した。
「顧客企業の機器開発において、ソリューション化やモジュール化を求める声が増えてくる中で『まとめて納品できないか』という話も増えてきていた。特に電源部品は機器の中でも大型の部品となるため、筐体設計にも影響する。電源と筐体の板金加工などを一括で行えることで、顧客企業にとっては設計の自由度が高まったり、リードタイム短縮が行えたり、さまざまな価値が生まれる」と馬田氏は合併の効果について語る。
また、リソースを有効活用するという狙いもある。「同じ立地の中にあるにもかかわらず、互いのリソースを利用できないという限定された状況があった。1つになることで、これらをそれぞれの需給状況などに合わせて最適に活用できるようになる。重複部門の統合などの効果もある。また、それぞれのモノづくりの工夫などを共有し生産性や品質向上につなげる取り組みも進めている」と馬田氏は述べている。
新体制は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、リモートワークなどの制限を受けながらのスタートとなった。「少人数に分けて全員に説明をし、新たなスタートの意義について伝えた」(馬田氏)とする。営業活動にも影響が出ているが、訪問が難しいため現在はWebサイトでの訴求に力を入れているという。「新たに『ちょっと違う板金屋』『かなり頼れる電源屋』とキャッチフレーズを作り、分かりやすい価値を訴えている。できる活動から進めていく」と馬田氏は述べる。
今後に向けては、OKI EMSグループの中での連携により、ソリューション提案をできる領域を拡大していく方針だ。馬田氏は「顧客にはさまざまな業種や業態の企業があるが『何でも相談に乗ってくれる』『頼りになる』と思ってもらえるような存在になりたい。そのためには顧客企業の話を聞き、課題解決として提案できる内容を増やしていくことが重要だ。これらの取り組みを進めることで、現在の約60億円の売上高を数年後には100億円に引き上げられるようにしたい」と抱負を語っている。
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