「ちょっと違う板金屋」と「かなり頼れる電源屋」が合わさると何ができるのか:製造マネジメント インタビュー(1/2 ページ)
OKIグループで2020年4月1日から新スタートを切ったのが「OKIシンフォテック」である。同社の新しい代表取締役社長となった馬田宗明氏に狙いと今後の方向性について話を聞いた。
製造業で「コト売り」や「サービス化」への関心が高まっている。「コト売り」と対極に位置付けられるのが「モノ売り」だが、実は「モノ売り」を形作るモノづくりの領域でも、単純に部品や加工品質をスペックやカタログだけで売るだけではなく、ソリューション(課題解決)提案を中心とする時代へと移ろうとしている。
こうした流れの中で、OKIグループで2020年4月1日から新スタートを切ったのがOKIシンフォテックである。筐体の板金加工を担ってきたOKIメタルテックが、電源の設計開発や製造を行ってきたOKIテクノパワーシステムズを吸収合併する形で誕生し、新たな社名を作り再出発した。OKIシンフォテックの新しい代表取締役社長となった馬田宗明氏に狙いと今後の方向性について話を聞いた。
板金加工、カスタム電源それぞれの強みを発揮
OKIシンフォテックは福島県福島市に立地し、従業員数は413人(2020年4月1日時点)、売上高は58億円(2020年度計画)という規模の会社である。もともとは第二次世界大戦時に疎開工場として1944年に設立された沖電気福島工場が前身でその時は1つの会社だった。
その後、東北沖電気を経てプリンタの部材や部品などの製造を担い、プリンタ部門が沖データシステムズに分離独立した流れから1998年にプレスや板金を中心とした沖エアフォルクと、カスタム電源を中心とした沖パワーテックに分社化された。その後は途中でそれぞれOKIメタルテックとOKIテクノパワーシステムズへと社名変更があったが、同じ拠点で2社がバラバラに運営を進める体制となった。これが2020年4月にあらためて1社へと統合されることになったという流れだ。
馬田氏は「もともとはそれぞれの会社をそれぞれの個性で伸ばしていくという方針だった」と合併前の状況を振り返る。その方向性の通り、板金事業、電源事業それぞれが設計から製造までの一貫工程を持つことがOKIシンフォテックの強みの1つでもある。
板金事業では、具体設計から、部品調達、抜き・曲げ、溶接、塗装・印刷、組み立て、検査までほとんどを社内で請け負うことができる。また、溶接は解試験や防水試験など構造品試験も社内で行えるため、品質を作り込めることも特徴だ。また、内部一貫生産であるために、VA(Value Analysis)/VE(Value Engineering)をベースに、素材や表面処理、加工などの最適化提案を行うことができ、コストを低減できることも強みだとする。
レーザー複合機やプレスブレーキ、200トンの大型プレス機、小型・中型プレス機、NC旋盤、圧入・カシメ機、NC成形研削盤、溶接機など、量産に使えるプレス設備から少量多品種の加工に対応できる汎用加工設備まで、幅広い設備をそろえていることが特徴だ。「製品のライフサイクルを考えると、試作時期は少量多品種でさまざまな種類を作ることが求められる。この時期の加工は汎用加工品で行う。その後、量産期間は同じものを大量に作るのでプレス機の方が向いている。最終的に製品の終息時期には再び生産量が減るので汎用加工機で対応する。こうしたライフサイクルを一貫してサポートできる点も強みだ」と馬田氏は語っている。
製造物は、筐体がメインで特に耐久性が求められる屋外筐体の加工が強みだ。その他、大型装置の組み立てや農業分野製品をODM(Original Design Manufacturing)供給するケースなどもあるという。
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