日本電産は売上半減でも営業黒字の体制へ、20年度は増益を宣言:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
日本電産は2020年4月30日、2020年3月期通期(2019年4月〜2020年3月)の決算を発表した。連結売上高は前期比4.0%増の1兆5348億円となり、過去最高を更新した。営業利益は同14.6%減の1103億円、当期利益は同45.4%減の601億円で増収減益となった。減益要因となったのは、自動車の駆動用モーターの開発と生産立ち上げに向けた追加の先行投資140億円や、買収の一時費用30億円、冷蔵庫向けコンプレッサー事業の譲渡などに関わる損失157億円などだ。
サプライチェーン強化で内製化推進、今は設備投資のチャンス
現在の日本電産グループの稼働状況は、日本が新型コロナウイルス感染症拡大前と同水準で、中国は2月に2割減となったのが、3月以降は感染拡大前の水準まで回復している。一方、中国以外のアジアでは感染拡大前の74%、欧州が同62%、米州が同63%という状況だ。HDD用モーターは、サプライチェーンの一部で混乱が生じたが、内製化によって需要に応えられる部材を確保した。
車載事業は2020年4〜6月期の売上高が通常の四半期の6割強に落ち込む見通しだ。現在は売り上げの7割が欧米向け、3割が中国向けという比率で、欧米での稼働停止長期化が響いている。だが、強力に固定費やコストの削減を推進し、2020年4〜6月期の営業黒字確保を目指す。「売り上げが戻れば戻った分だけ収益を上乗せできる計画を作っている。欧州の自動車市場ではまだ戦いが始まったばかりで今後数年間が勝負だが、量を持ったところが勝つ。自動車メーカーが自社で駆動用モーターをやって勝てる時代ではない。価格競争になるだろう。そろそろ駆動用モーターが各社から出揃って実力が見えてくる時期だ」(永守氏)。
永守氏はサプライチェーンの混乱を繰り返さないために、今回サプライチェーンの一部で混乱が起きたHDD用モーターの部品などを内製化する方針を示した。「今回失敗だったのは、ネジ1本まで見たときにサプライチェーンが混乱をきたしたことだ。入手困難になった部品とその影響を分析し、問題が起きた部品は内製化に向けて直ちに投資する。今は不況で機械設備のコストも下がっているので投資にはいい機会だ。複数の拠点で同じ部品を作っていれば、拠点間での融通もできる。日本電産があちこちで作っていてよかったと褒めていただいた。同じ失敗は繰り返さない」(永森氏)と語る。
設備投資や研究開発費を増やす分野としては「5つの大波」を挙げた。「5Gとサーマルソリューション」「省人化」「デジタルデータ爆発」「自動車の脱炭素化」「家電の省電力化」の各分野でモーターを提案する。特に自動車については「原油価格が下がってエンジン車が復活するか、燃料が安いのに電気自動車に誰が乗るか、という議論には参加しない。技術革新に投資し、ストライクゾーンにボールを投げなければならない。これから、自動車には価格競争の世界がくる。シェア4番手では大赤字になるような世界だ。完成品メーカーが全員勝ち組とは限らない。サプライヤーとして、負け組のメーカーに納入したらアウトだ」と永守氏は語った。
関氏も電動化の進展に期待を寄せ、自動車業界のCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)へのアプローチは今後も変わらないとの考えを示した。特に、中国は政府主導のEV普及が新型コロナウイルス感染症を機に一気に加速すると見ている。また、サプライヤーから“完成品”を購入する傾向も強まると期待を寄せる。「CASEは1つずつにとてもお金がかかる。新型コロナウイルス感染症への対応でお金が企業から流出しており、開発投資の負担はさらに大きくなる。駆動用モーターは特に、外から完成品を買って、各社がそれぞれ合わせこむような動きが増えるだろう」(関氏)。
永守氏のリモートワーク論
日本電産グループでは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、開発部門でリモートワークを積極的に導入している。永守氏はリモートワークの生産性向上にも言及した。
「日本人は自己管理ができない人間が多い。上司や同僚の目があるから緊張して業務ができる人や、自分で考えられず上司の指示がないと動けない人がいる。また、子どもの面倒を見なければならなくて仕事が進まない人もいる。出社しているときよりも低い生産性なら日本のリモートワークはダメだ。サテライトオフィスを作ることも検討するが、まずはプロアクティブに仕事をしてほしい。会社側も、リモートワークのやり方を考える必要がある」(永守氏)
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