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パンデミックに耐えうるサプライチェーンのリスクマネジメントとは(前編)サプライチェーンの新潮流「Logistics 4.0」と新たな事業機会(特別編)(1/3 ページ)

物流の第4次産業革命ともいえる「Logistics 4.0」の動向解説に加え、製造業などで生み出される新たな事業機会について紹介する本連載。今回は特別編として、新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックにも対応可能な、サプライチェーンの維持・継続を図るためのリスクマネジメントの在り方を取り上げる。

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 本連載は、“サプライチェーンの新潮流「Logistics 4.0」と新たな事業機会”と題して、先進企業の動向と、新たなプラットフォームビジネスの可能性を紹介してきました。ですが、今現在、喫緊の課題となっているのは、社会全体に大きな影響を及ぼしている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応でしょう。

⇒連載『サプライチェーンの新潮流「Logistics 4.0」と新たな事業機会』バックナンバー

 そこで特別編として、COVID-19のようなパンデミックにも対応可能な、サプライチェーンの維持・継続を図るためのリスクマネジメントの在り方を取り上げたいと思います。前編となる本稿では、リスクマネジメントにおけるパンデミックと自然災害の違いや、危機的事象が発生したときのリスクマネジメントの在り方、リスクマネジメントの5つのプロセスについて解説します。次週公開予定の後編では、危機的事象に際してサプライチェーンを維持・継続するための在り方、本連載で取り上げてきた「サプライウェブ」のリスクマネジメントについて説明します。

新型コロナウイルスの流行による世界経済への影響

 言わずもがなですが、COVID-19の流行は、世界経済に甚大な影響を及ぼしつつあります。ローランド・ベルガーの2020年3月24日時点での予測では、一部施設の閉鎖、隔離、ロックダウンなどを背景に経済的な混乱が4週間続いた場合、2020年のGDP成長率はグローバルで3.1%悪化します。より大きな被害を受けている欧州や米国のGDP成長率はマイナスに陥るはずです。

 ただし、これは3月24日時点での予測です。残念ながら欧州や米国の状況は当時よりも深刻化しています。経済的な混乱が4週間でとどまるとは考えにくいでしょう。グローバルでのGDP成長率がマイナスになることは、もはや避けられそうにないと見るべきです。

2020年のGDP成長率
2020年のGDP成長率(クリックで拡大) 出典:ローランド・ベルガー

 当初、中国を中心に感染が拡大したことで、グローバルサプライチェーンが分断されることでの各産業への影響が危惧されました。しかし、パンデミックとなったことで、産業界への影響は供給サイドから需要サイドにシフトしつつあります。すなわち、「サプライチェーンの分断により生産活動を継続できない/モノを供給できない」ことよりも、「日常生活を継続できない/モノを買えない」ことの影響が大きくなりつつあるわけです。

 足元では、「不要不急の外出」が自粛されることで、飲食、宿泊、旅客、観光などのサービス業に多大なダメージを与えています。今後は「不要不急の購入」が減少することで、自動車や家電といった耐久消費財産業にも影響が及んでいくでしょう。

パンデミックであるがゆえの難しさ

 COVID-19の流行は、パンデミックであるがゆえに最終的な被害の見通しが立ちません。例えば、中国は国内での流行が既にピークアウトしたといわれていますが、さまざまな規制が緩和されることで、第二の流行に至る可能性もあります。欧州や米国は、中国以上のダメージを受けており、収束の時期を見極められるような段階ではありません。

 それは、緊急事態宣言が発令された日本も同じです。あらためて外出などの自粛が要請されたことで新たな感染者が減少に転ずるのか、欧州や米国と同じ道をたどるのか、現時点では誰も予見できません。だからこそ、状況の変化に即して柔軟に対応していくことが求められます。自国だけではなく、自社の拠点や取引先のある地域の状況も見定めながら臨機応変に意思決定を下す必要があります。地震や水害のように、最初に被害のピークが来る天災とは違う難しさがあるわけです。

 パンデミックであるがゆえの難しさはもう1つあります。それは、地域ごとに足並みをそろえなければならないということです。例えば、ある地域で新たな感染者が減ったとしましょう。ある会社がいち早く事業を再開したとして、その結果として感染者が再度増加に転ずれば元の木阿弥です。社会的に問題があるだけではなく、その会社のレピュテーションも大きく低下してしまいます。とにかく復旧を成し遂げればよい地震や水害とは異なる対応が必要なのです。

 全世界的な被害であるがゆえに、業界内で連携を図ることも枢要です。自社だけではなく、調達先や納品先も生産活動を再開・継続しなければ、サプライチェーンは復活しません。調達先や納品先、競合他社とも協力することで、円滑な復旧に努めるべきです。

 地域・業界での協調を図るにあたり、政府や自治体、業界団体などの果たす役割は極めて重要です。今はまだ感染が拡大していますが、ピークアウトのめどが立った際には、どのタイミングで、どこまでの復旧を実現するのか、その基準とマイルストーンを示すべきです。企業としても、業界団体に働きかけるなり、取引先や競合他社と情報を共有するなりして、歩調をそろえられる工夫を講じるべきでしょう。

 翻って、パンデミックであるがゆえの難しさを説明してきましたが、地震や水害と比べて対処が難しいかというと、必ずしもそうとは限りません。確かに、将来の見通しは立ちませんが、地震や水害と違って、突如として甚大な被害が発生するわけではありません。時々刻々と変化する事業環境に的確に対応できれば、被害を最小化できます。

 建物や設備に被害が及ぶこともありません。管理職や間接部門の人員を現場に投入したり、リモートワーク(テレワーク)に移行したりすることで、事業活動をある程度継続することが可能です。復旧段階で設備投資を必要としないことも優位点といえるでしょう。

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