日立が新型コロナ支援策、フェイスシールド生産や中小企業のテレワーク立ち上げで:製造マネジメントニュース
日立製作所は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止に向けた同社グループの支援策について発表。医療現場で不足するフェイスシールドの生産などが柱となっている。この他、中小企業のテレワーク環境の容易な立ち上げを支援する「かんたんPrivate DaaS支援パック」を提供することも発表している。
日立製作所は2020年4月22日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止に向けた同社グループの支援策について発表した。医療現場で不足するフェイスシールドの生産や、人工呼吸器など医療機器の生産に活用できるクリーンルームの提供などが柱となっている。この他、中小企業のテレワーク環境の容易な立ち上げを支援する「かんたんPrivate DaaS支援パック」を提供することも発表している。
発表した支援策は「企業として貢献できること」「従業員として貢献できること」の2つに分かれている。まず、「企業として貢献できること」では、政府の要請に応えて医療現場への支援を進める。フェイスシールドは、日立オートモティブシステムズと日立グローバルライフソリューションズ、日立ターミナルメカトロニクスの生産拠点で、2020年5月中旬から週2000〜3000個のペースで生産を開始する。同年6月には週8000〜1万個に生産量を拡大する予定だ。
人工呼吸器などの医療機器が不足していることも大きな課題だ。そこで、日立ハイテク(2020年2月に日立ハイテクノロジーズから社名を変更)の子会社が所有するクリーンルーム(450〜500m2)を医療機器の生産スペースとして提供することを決めた。日立グループ自身で医療機器は生産しないが、今後政府が選定する医療機器メーカーが同所で行う生産活動について、日立ハイテクと近隣の日立グループ各社から人財を派遣するなどして協力する。
深刻なマスク不足にも対応する。日立ハイテクや日立建機などの日立グループ各社から医療用マスク約11万枚、日立ハイテクから一般のサージカルマスク約40万枚を提供することを経団連に申し出たという。
「従業員として貢献できること」では、日立グループが2015年から実施している社内アイデアコンテスト「Make a Difference!」の中で、「Challenge to COVID-19」というテーマを設けてCOVID-19への対策に特化したアイデア募集を開始した。グローバルで働く日立グループ30万人の知恵を集め、COVID-19による危機を乗り越え、社会に貢献できるアイデアの早期実現を目指すとしている。この他、日立製作所の福利厚生制度の一つであるカフェテリアプラン制度を活用して、コロナウイルス対策に取り組む医療従事者などへの寄付金の募集も開始した。日立グループが支援するクラウドファンディングの枠組みを活用して、新型コロナウイルス対策への融資を行う取り組みも準備している。
東原社長「デジタル技術を核としたイノベーションで貢献」
日立 執行役社長兼CEOの東原敏昭氏は「デジタル技術を核としたイノベーションで、日立グループだからこそできることは何かを考え、人々の生活の維持、回復、発展に貢献していく」とコメントしている。そのデジタル技術による支援の一つが「かんたんPrivate DaaS支援パック」の提供だろう。
日立は、2004年からシンクライアントを活用したVDI(仮想デスクトップ環境)システムを社内導入しており、2013年からはこの実績を基に「VMware Horizon」や「Citrix Virtual Apps and Desktops」を採用した「かんたんPrivate DaaS」を多くの大規模事業者向けに提供してきた。
今回は、COVID-19の影響によってテレワークに取り組む必要が出てきている中小企業向けとして、「かんたんPrivate DaaS」に柔軟な課金メニューを追加するとともに、ストレージ新製品を投入するなどしてプラットフォームの強化を図った。顧客指定のデータセンターに日立資産のサーバを設置し、ユーザーごとに専用のVDIを提供するシステムの構築や運用支援を日立側が行うことで、セキュアで安定したプライベート型のDaaS(Desktop as a Service)環境を月額料金で利用できるサービスになっている。
「かんたんPrivate DaaS支援パック」では、新規に年間導入契約を締結した顧客向けを対象に、2021年3月までの期間、最大半年間のテレワーク環境のサービス利用料を日立が負担する。ユーザー数は最大1000まで。
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