ホンダのVDI導入、きっかけは東日本大震災――3D CADやCAEでVDIを使う:CADニュース(1/2 ページ)
ホンダは「次世代EWSプロジェクト」で「NVIDIA GRID」を利用してEWS環境を構築。VDI導入のきっかけは、同社四輪R&Dセンター(栃木)が東日本大震災で被災したことだった。
エヌビディアは2017年11月7日に記者説明会を開催し、同社の仮想GPUソリューションに関する最新情報を明かすとともに、自動車メーカーや教育機関でのVDI導入事例を紹介した。
デスクトップ仮想化(VDI:Virtual Desktop Infrastructure)とは、PCのデスクトップ機能を拡張してサーバ上で稼働させることで、遠隔から直接、デスクトップの操作ができる仕組みだ。VDIを利用する端末は、ネットワークで転送された画面を見るだけに使われる。VDIは、アプリケーション実行やデータ処理をサーバ側に任せるシンクライアントを実現するための一方式でもある。
メカ設計のメインツールとなる3D CADやCAEいったシステムにおいては、この数年間で設計ツールで使えるVDIシステムやサービスが登場したり、現場での導入の動きが見られたりしてきた。しかしながら、そのようなシステムはグラフィック処理の負荷が非常に高く、VDI化における課題は多々存在していた。しかし、この数年間においても、VDIクライアントの技術や、サーバやネットワーク技術などが向上してきており、かつCADやCAE側においてもVDI対応が進んできている。
設計ツールユーザーのVDIに対する意識については、「ここ数年で、確かにポジティブに変わってきている」とエヌビディア エンタプライズ事業部 ビジュアライゼーション部 部長の田上英昭氏は言う。
「過去のVDIは、画面表示への対応は二の次。『VDIでCADなんて動かせない」といわれてきた。現在はCADもサクサク動くようになった。シトリックスなどネットワーク側の技術と、われわれのエンコーディングの技術により、広帯域で高速にデータを飛ばせる技術が発展してきた」(田上氏)。
本田技術研究所では現在、約2500台のVDIを導入している。同社がVDIを導入するきっかけになったのは2011年3月11日に発生した東日本大震災だった。同社四輪R&Dセンター(栃木)は震度6強の地震に見舞われた。被災によってセンター内にあったワークステーションの多くが破損し、PLMやPDMの外で管理されていたデータの多くを失い、多大な損害を被ったという。
これをきっかけに同社では、設計関連のアプリケーションやデータをサーバに集約し、VDI化の取り組みも開始。当時はvDGA(Virtual Dedicated Graphics Acceleration)を導入し、パススルー方式でVDIを構築していたが、3D CAD/CG、CAEなどのグラフィックス処理の効率化が課題となった。その後、2015年に開始した「次世代EWSプロジェクト」で「NVIDIA GRID」を利用してVDIの環境を構築した。2017年には、さまざまな国内拠点や海外拠点へ展開している。「NVIDIA GRID」を活用することで仮想GPU化が可能となり、単にGPUを増強するだけではなく、ユーザー個人の利用状況に応じてGPUリソースが割り当てられるようになった。そのため、グラフィックス処理の効率化が図れたという。
高知工科大学においては、4つあるワークステーション室にある600台以上のマシンをVDIで仮想化した。同校のシステム管理担当3人では、おびただしい数のワークステーションのシステム保守やサポートに十分対応しきれていなかった。ワークステーション室とシステム課の部屋は、当然ながら物理的に離れていて、管理者はサポートやトラブルがあるたびに、文字通り奔走しなければならなかった。かつ学生がワークステーションを利用できる時間にも制限があった。VDIの導入により管理担当の負荷も軽減し、業務を効率化できた。学生たちについては校内にいればどこでも、授業の合間などで課題に取り組めるようになった。NVIDIA GRIDならではの効果としては、授業の内容に応じてGPUリソース配分が決められることを挙げた。また、同様の取り組みは他の工業系大学でも見られる。
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