ホンダのVDI導入、きっかけは東日本大震災――3D CADやCAEでVDIを使う:CADニュース(2/2 ページ)
ホンダは「次世代EWSプロジェクト」で「NVIDIA GRID」を利用してEWS環境を構築。VDI導入のきっかけは、同社四輪R&Dセンター(栃木)が東日本大震災で被災したことだった。
Windows 10のグラフィック処理の課題とGPU側での解決策
VDI化で大きな課題となるのがグラフィック処理だ。VDIはネットワークを介して画面表示することもあり、レイテンシ(遅延)の軽減が課題になる。VDIでの画面表示においては、グラフィック処理の負荷が高まるにつれて、画像がチラついたりフリーズしたりといったことが起こり得た。
さらに「Windows 10」では、リッチな視覚効果を無効化することでパフォーマンスを優先する設定ができなくなったことも一因となり、Windows 7と比較してグラフィック処理負荷が大幅に高まった。Windows 10およびOffice 2016においては、512MB以上のグラフィックスメモリを必要とする。またWindows 10側がCPUを使ってうまく処理してしまうため、グラフィック表示上ではあまり分からず、他のアプリが起動できない、システムがフリーズするといった事態で気が付くことになる。
エヌビディアにおいては、同社の「CUDA(Compute Unified Device Archtecture)」を進化させ、仮想化システムの中でグリッド化したGPUに割り振って処理させるシステムを提供している。GPUソフトウェアである「NVIDIA GRID 5.0(GRID 5.0)」ではPASCAL世代のGPUをサポートし、モニタリングも強化した。さらに次世代のVOLTAのVDI対応は現時点においては未定。
3D CADのワークステーションにおいては、同社のMAXWELL世代のGPUである「M60」や「M10」が向いている。大規模データを扱うCFDや、3D CGにおけるリアルタイムレンダリングといった処理では、PASCAL世代の「P40」および「P100」が望ましい。GRID 5.0では後者のようなシステムをVDI上でも利用できるようになり、かつGPUリソースをユーザーの利用状況に応じて適切に割り振ることが可能となった。
同社では、国内のVDIサービスにおける採用を増やしていきたいという。「国内でVDIサービスを提供する企業が増えてきている。レイテンシが課題になるので、海外拠点よりは国内拠点のクラウドサービスを利用した方が回線が安定する」(田上氏)。
GRID 5.0以降は、Nutanixのハイパーバイザー「AHV(Acropolis Hypervisor)」に対応する。さらにMotion(ライブマイグレーション:トラブル時も仮想マシンの処理を止めることなく、別の環境に自動シフトさせる技術)に対応し、仮想マシン単位のモニタリングをさらに強化していく。
将来はVR(Virtual Reality)コンテンツや点群データも処理できるVDIシステムの実現があり得る。VRについては、VDIシステム側の本格対応がこれからではあるものの、少なくとも実証実験・検証レベルでの取り組みは既に実施されていると田上氏は話す。今後、VDIがより進化していくことで、大規模データによるVRコンテンツであっても、現場にあるロースペックなノートPCで表示させることも期待できる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- なぜ今3次元CADのデスクトップ仮想化が“使える”ようになったのか
シトリックス・システムズ・ジャパンはユーザーイベント「Citrix Mobility」を開催。そのセッションで、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ ビジネス開発の大月哲史氏が、3次元CADを仮想デスクトップで扱えるようになった理由と、その価値について解説した。 - GPUはこれまでも、そしてこれからもディープラーニングをけん引する
エヌビディアが主催するGPUを用いたディープラーニングのイベント「NVIDIA Deep Learning Institute 2017」の基調講演に、米国本社NVIDIAの主席研究員を務めるビル・ダリー氏が登壇。ディープラーニングの進化に果たしてきたGPUの役割を強調するとともに、今後もGPUがけん引役になると強調した。 - CAD/CAEをターゲットとしたGPU製品など販売する新会社を設立
日本GPU コンピューティングパートナーシップは新会社のGDEPソリューションズを設立。「GPUプラットフォーム事業」「クラウドインフラ事業」が同社の主な事業となる。 - 高性能GPU搭載ワークステーションの組み込みモデルを発売
GDEPソリューションズは、レノボ・ジャパンのワークステーション「ThinkStation」シリーズに、グラフィックスボード「ELSA GeForce」シリーズを搭載した、ゲーム開発およびVRアプリケーション向けの組み込みモデルを発表した。 - インテルアーキテクチャもディープラーニングに有効、「GPUが最適は先入観」
インテルが人工知能(AI)技術や事業、ビジョンについて説明。買収企業の技術を取り入れたAIプラットフォーム「Nervana」により、小から大まで規模に応じてスケーリングさせられるAI技術を提供する。GPUが最適というイメージが強いディープラーニングについても「それは先入観にすぎずインテルアーキテクチャのようなCPUも十分に有効」とした。 - 3次元CADで仮想デスクトップ環境を導入検討できる検証センターを設立――日本IBM
新設する「IBM System x CAD on VDI検証センター」を利用することで、最新のハードウェア環境を用いて短時間でPOC(Proof Of Concept:概念実証)を実施できるという。