クラウドへ移行する日立の設計開発環境、立ちはだかった3つの課題とは:製造IT導入事例(1/2 ページ)
日立製作所がグループ内における設計開発環境の改革に乗り出している。同社のクラウド型設計業務支援サービス(DSC/DS)を用いて設計開発環境をクラウドに移行したITプロダクツ統括本部
日立製作所がグループ内における設計開発環境の改革に乗り出している。同社が2016年10月に発表した、自社開発のクラウド型設計業務支援サービス(DSC/DS:Hitachi Digital Supply Chain/Design)※)を活用して、設計開発に用いるPCなどの端末を仮想デスクトップ環境(VDI)に移行するとともに、製品の設計業務に関連するさまざまなデータをクラウド上に集約して一元管理することを目指すものだ。
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これにより、設計開発業務の効率化が図れるだけでなく、国内外の複数の拠点や社外のサプライヤーと安全かつ迅速にデータを共有できるようになる。さらには、設計開発のみならず、製造工程や販売、納品、保守といったバリューチェーン全体の情報と連携し、日立グループ内を横串で通すような基盤としての活用も想定している。
このDSC/DSを導入して大きな成果を得ているのが、日立製作所でサーバやストレージ製品の設計開発を担っているITプロダクツ統括本部だ。クラウドを用いて設計開発環境を一元管理することにより、設計用端末の運用コストを大幅に削減するなどの効果が出ているという。
「24時間止まらない設計」が可能に
ここであらためてDSC/DSの特徴を見ていこう。DSC/DSは、大まかに「3D-VDIサービス」と「設計業務ナビゲーション」という2つのサービスに分けられる。3D-VDIサービスは、3D CADやCAEといった高い処理性能を求められる設計開発用のITツールを快適に利用できるようにする仮想デスクトップ環境だ。そして、設計業務ナビゲーションを使えば、3D-VDIサービスで扱う3Dデータや、製品仕様書、プロジェクト進捗といった設計業務に関連するデータをクラウド上で集約、一元管理し、画面上に表示できる。
DSC/DSでVDIを導入することにより、それぞれの設計者がローカルで管理していた端末ごとの環境の差異がなくなり標準化される。日立製作所 産業・流通ビジネスユニット エンタープライズソリューション事業部 モビリティ&マニュファクチュアリング本部 TSCMソリューションセンタ 主任技師の田中良憲氏は「これまではそういったIT環境の違いがデータ共有の壁となり、無駄を生んでいた」と指摘する。さらに、設計業務ナビゲーションとの組み合わせで、設計業務プロセスの標準化とクラウド上でのデータ管理が可能になって、設計開発業務の「見える化」が進み、設計開発期間の短縮にもつなげられるという。
また、クラウドを用いているので国内外の拠点やサプライヤーとの間での情報連携も容易になる。「国内と海外の拠点間で設計開発業務の引き継ぎをシームレスに行えば、24時間止まらない設計も可能だ」(田中氏)という。
3つの段階から成る「DSC/DS」への移行
ただし、設計開発環境のDSC/DSへの移行を一足飛びに行うことはできない。段階を踏んでの移行が必要になる。まず第1段階に行うのが設計用端末のVDI化だ。この段階では、VDIの仮想サーバは社内で運用することになる。そして第2段階で、仮想サーバをDSC/DSのクラウド環境に移し、3D CADツールなども併せて移行する。最後の第3段階では、サプライヤーなどの取引先とのデータ共有を行うための社外環境分離を実施することになる。これら3つの段階を経て、国内外の拠点やサプライヤーとの間で協調設計が行える理想の設計開発環境が完成することになる。
現在、日立グループでは第1段階のVDI化の取り組みについて「かなり進んでいる」(田中氏)状況にある。VDI化の進展を受けて、第2段階のクラウド環境への移行も進み始めているところだ。ITプロダクツ統括本部はその先行事例の1つになる。なお、第3段階の社外との連携は「日立グループとしてはこれから始める取り組みになる」(同氏)としている。
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