データで「何」を照らすのか、デジタル変革の“際”を攻める日立の勝算:製造業×IoT キーマンインタビュー(1/3 ページ)
産業用IoTの先行企業として注目を集めてきた日立製作所。同社が考えるデジタル変革の勝ち筋とはどういうものなのだろうか。インダストリーセクターを担当する、日立製作所 代表執行役 執行役副社長 青木優和氏に話を聞いた。
2016年から「Lumada」を掲げ産業用IoT(モノのインターネット)の先行企業として注目を集めてきた日立製作所(以下、日立)。幅広いポートフォリオを生かし「プロダクト×OT(制御技術)×IT」を武器に、多くのパートナー企業を獲得し「協創」を進めている。
日立が考えるデジタル変革の勝ち筋とはどういうものなのだろうか。2019年4月から産業領域をインダストリーセクターとして取りまとめ「一体運営」を進める日立製作所 代表執行役 執行役副社長 青木優和氏に話を聞いた。
本連載の趣旨
ITmedia産業5メディア総力特集「IoTがもたらす製造業の革新」のメイン企画として本連載「製造業×IoT キーマンインタビュー」を実施しています。キーマンたちがどのようにIoTを捉え、どのような取り組みを進めているかを示すことで、共通項や違いを示し、製造業への指針をあぶり出します。
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デジタル変革の本質は“際”の課題解決
MONOist 日立が「Lumada」を立ち上げてから約4年になろうとしています。あらためてIoTやデジタル変革への手応えについて教えてください。
青木氏 産業のあらゆる物事がデジタルソリューションへとまさに変化する過渡期にあるが、こうした状況に応じたビジネスモデルの変革はかつて誰も経験したことがないものだ。打つべき手として“定石”が存在しない中で、取り組みを進めながら方向の修正や調整をしながら進めているのが現実的なところだ。
日立としてデジタル変革の基盤として「Lumada」を押し出してきた。「Lumada」の語源は、「illuminate(輝かせる)」と「data(データ)」を組み合わせた造語で、「顧客データから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション、サービス、テクノロジーの総称」と定義している。ただ、明確な道筋があったわけではなく、位置付けも少しずつ調整しながら取り組んでいる。よく「Lumadaの範囲」や「Lumada関連売り上げ」などについて聞かれるが、“定石”が存在せず変化し続ける中で、個人的にはそういう議論はあまり意味がないと考えている。
「Lumada」として提供するソリューションやサービス、テクノロジーそのものがわれわれの取り組みの本質ではない。デジタル技術の力を使って今までできていなかった「際をつなぐ」ということが価値を生む本質である。「際」は何かと何かの境目の領域だ。デジタル技術で「現場と経営」や「サプライチェーン」「企業間」を結ぶ中で、「際」の領域でさまざまな問題が生まれる。そこを解決するのが「Lumada」の語源が指し示す通り「データで照らす」本質的な取り組みになると考えている。
デジタルソリューションを使ったビジネス展開の重要な要素として「プラットフォーム」があり、「プラットフォーマーになる」ことが勝ち組への道だといわれている。IT(情報技術)領域ではこうしたプラットフォーマーが大きな力を持っている。しかし、産業領域ではプラットフォームにより一括で同じサービスを提供するわけにはいかない。それぞれの現場や環境が全て異なり、1つのプラットフォームで全ての課題が解決できないためだ。
「際」でさまざまな問題が生まれていてもプラットフォーマーには解決できない。システム構築を担うシステムインテグレーター(SI)はここしばらく厳しい立場に追いやられていたが、「際」の時代にはSIこそが大きな役割を担うことになる。日立は「プロダクト×OT×IT」とするように幅広いポートフォリオを持ち、これらを組み合わせたシステム開発力も備えており、そこに勝ち筋があると考えている。
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