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新型コロナ対策に効果が期待の「アビガン」、原料の供給強化も進む工場ニュース

新型コロナウイルス感染症が広がる中、治療薬として期待されている富士フイルムグループの抗インフルエンザウイルス薬「アビガン錠」(一般名ファビピラビル、以下アビガン)の原薬供給の強化も進んでいる。2020年4月2日には、デンカが原料となるマロン酸ジエチルの生産を再開することを発表した他、同年4月16日にはカネカが原薬供給を行うことを発表している。

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が広がる中、治療薬として期待されている富士フイルムグループの抗インフルエンザウイルス薬「アビガン錠」(一般名ファビピラビル、以下アビガン)の原薬供給の強化も進んでいる。2020年4月2日には、デンカが原料となるマロン酸ジエチルの生産を再開することを発表した他、同年4月16日にはカネカが原薬供給を行うことを発表している。

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「アビガン」がウイルスの増殖を防ぐ仕組み(クリックで拡大)出典:富士フイルム

 「アビガン」は、国内で抗インフルエンザウイルス薬として製造販売承認を取得している薬剤である。ウイルスのRNAポリメラーゼを選択的に阻害することでウイルスの増殖を防ぐメカニズムを持ち、インフルエンザウイルスと同種のRNAウイルスである新型コロナウイルスに対しても効果が期待されている。既に臨床研究や観察研究の枠組みの中で新型コロナウイルス感染症患者に対する投与が開始されている。これらに合わせて、日本政府は緊急経済対策の1つとして「アビガン」の備蓄量を200万人分まで拡大することを決定している。

 4月15日には富士フイルムグループで9月までに月産約30万人分(3月上旬に比べて約7倍)に増産することを発表しているが、それに前後して原材料や原薬メーカーの増産も進んでいる。

 デンカは4月2日に「アビガン」の原料となるマロン酸ジエチルを5月から生産開始することを発表した。マロン酸ジエチルは、合成香料、農薬、医薬品などの原料として使用される有機化合物で「アビガン」の原料となる。デンカは国内唯一のマロン酸ジエチルメーカーで、その原料となるモノクロル酢酸も国内で唯一、関連会社であるデナックで生産している。デンカでは、市場競争の中で2017年4月にマロン酸ジエチルの生産をやめていたが、日本政府の要請により、今回この停止ラインを再稼働する。

 カネカは新たに「アビガン」の原薬を供給することを2020年4月16日に発表している。同社は、医薬品のプロセス開発力と製造技術、品質などが評価を受け、世界各国の大手製薬会社に向けて原薬などについても多くの導入実績を持つ。今回は「アビガン」増産を迅速に進める他、国内での供給体制が求められることから、原薬供給を要請されたとしている。設備投資、人員配置転換や生産計画調整により製造体制を整え、7月から原薬の供給を開始予定だとしている。

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