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政府の新型コロナ緊急経済対策、製造業はどんな支援を受けられるのか製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

日本政府が緊急事態宣言と合わせて発表した「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」は事業規模で総額約108兆円に上る。同経済対策において、製造業はどのような支援を受けられるのだろうか。

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 日本政府は2020年4月7日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に対応するため1都7府県を対象とする緊急事態宣言を発出した。これと併せて、長く続く外出自粛などにより厳しい状況にある国内経済を下支えするとともに、COVID-19収束後のV字回復を目指す「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」※)を発表している。

※)関連リンク:内閣府「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策〜国民の命と生活を守り抜き、経済再生へ〜

 同経済対策は事業規模で総額約108兆円に上り、国内総生産(GDP)の約2割に相当する。2008〜2009年に起きた金融危機(いわゆるリーマンショック)に向けた緊急経済対策の2倍弱となり、経済対策として過去最大の事業規模となる。本稿では、同経済対策の中で製造業と関わる支援施策についてまとめた。

2つのフェーズと5つの柱

 COVID-19の感染拡大の影響により、経済は国内外で大幅な落ち込みが想定されている。金融機関などの調査によれば、2020年4〜6月期は都市封鎖などの影響で欧米の経済が大幅に後退しており、その外需減少の影響で日本経済にも大きな影響が出ている。世界経済の回復に時間を要すること、東京オリンピック・パラリンピックの延期も重なり、同年7〜9月期も日本経済の状況は厳しくなる見通しだ。

民間調査機関などによる経済見通
民間調査機関などによる経済見通し。2020年の経済規模の減少幅は、世界全体で前年比1.5〜4.0%、日本で0.2〜4.8%、米国で0.5〜9.0%となっている(クリックで拡大) 出典:内閣府「令和2年第4回経済財政諮問会議」

 新型コロナウイルス感染症緊急経済対策は、この経済状況を受けて「前例にとらわれることなく、財政・金融・税制といったあらゆる政策手段を総動員する」(発表文より抜粋)ことを目的に策定された。

 経済対策は基本的に2つの段階を意識して策定された。感染症拡大の収束にめどがつくまでの間の「緊急支援フェーズ」と、収束後の反転攻勢に向けた需要喚起と社会変革の推進に向けた「V字回復フェーズ」である。これら2つのフェーズを意識して、以下の5つの柱に分けて経済対策を実施する。

  1. 感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発(財政支出:約2.5兆円、事業規模:約2.5兆円)
  2. 雇用の維持と事業の継続(財政支出:約22兆円、事業規模:約80兆円)
  3. 次の段階としての官民を挙げた経済活動の回復(財政支出:約3.3兆円、事業規模:約8.5兆円)
  4. 強靱な経済構造の構築(財政支出:約10.2兆円、事業規模:約15.7兆円)
  5. 今後への備え(財政支出:約1.5兆円、事業規模:約1.5兆円)

感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発

 「感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発」では、国民の安心の確保、そして経済活動の一刻も早い再起動に向けた、感染拡大の防止と早期収束を目指す。施策としては、「マスク・消毒液等の確保」や「検査体制の強化と感染の早期発見」、「医療提供体制の強化」など多岐にわたる。

 製造業にとって関わりが深いのは、COVID-19の感染拡大防止や治療に役立つ製品の開発や生産に関わる施策だろう。「マスク・消毒液等の確保」では、経済産業省の「マスク・アルコール消毒液等生産設備導入補助事業」が、「医療提供体制の強化」では経済産業省の「人工呼吸器生産のための設備整備事業」が挙げられている。

 また、「治療薬・ワクチンの開発加速」では、COVID-19の感染拡大の根本的な解決に役立つと期待されている新型インフルエンザの治療薬「アビガン」と膵炎の治療薬「フサン」の名前が具体的に挙がっている。アビガンについては、経済産業省の「アビガン生産のための設備整備事業」において、海外と協力しながら臨床研究を進めつつ、2020年度内に200万人分の備蓄を目指す。フサンについては、厚生労働省の「フサン等の既存治療薬の治療効果及び安全性等の検討」で、観察研究として事前に同意を得た患者への投与を進めるという。

雇用の維持と事業の継続

 「雇用の維持と事業の継続」は、経済活動の急速な縮小によって、事業の継続や雇用の維持が危ぶまれている中小企業・小規模事業者やフリーランスを含む個人事業主が対象となっている。中小企業の占める割合が99.5%といわれる国内の製造業においても、COVID-19の感染拡大による影響に対応するには、この施策を活用することが重要になってくる。

 「雇用の維持」では、厚生労働省の「雇用調整助成金の特例措置の更なる拡大」がある。雇用調整助成金について、緊急対応期間(2020年4月1日〜6月30日)の助成率を中小企業は5分の4、大企業は3分の2に引き上げる他、解雇などを行わない場合には、中小企業は10分の9、大企業は4分の3とし、雇用保険被保険者でない非正規雇用労働者も対象とするなどの拡充を行う。

 「資金繰り対策」では、実質無利子・無担保の融資について、十分な規模の融資枠を確保するとともに手続きの迅速化に努める。また、「事業継続に困っている中小・小規模事業者等への支援」では、事業収入が前年同月比50%以上減少した事業者について、中堅・中小企業は上限200万円、個人事業主は上限100万円の範囲内で、前年度の事業収入からの減少額を給付する経済産業省の「中小・小規模事業者等に対する新たな給付金(持続化給付金(仮称))」を用意している。「税制措置」でも、財務省などが行う「納税の猶予制度の特例」や「欠損金の繰戻しによる還付の特例」といった施策がある。

 なお、事業維持にとどまらず、COVID-19の影響を乗り越えるために前向きな投資を行う事業者を対象にした経済産業省の「中小企業生産性革命推進事業の特別枠創設」も用意されている。3つある補助金枠のうち「ものづくり補助金」については、顧客への製品供給を継続するために必要な設備投資や製品開発を行う「サプライチェーンの毀損への対応」が要件となっており、補助上限は1000万円で、特別枠での中小企業の補助率は従来の2分の1から3分の2に引き上げられている。

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