CPSの勝ち筋とは? “サービス連打”を目指す東芝の挑戦:製造業×IoT キーマンインタビュー(4/4 ページ)
「CPSテクノロジー企業」として再成長を目指す東芝。この再成長を支える技術基盤確立に力を注ぐのが、東芝 コーポレート デジタイゼーションCTO デジタルイノベーションテクノロジーセンター長の山本宏氏である。同氏の東芝での取り組みと、CPS時代に勝ち残るポイントについて聞いた。
「ホームランを打つ」とは何か
MONOist CPSによるサービス展開を支える技術基盤を次々に構築してきましたが、当面の目標はどう考えますか。
山本氏 2019年11月に開催した技術戦略説明会(※)で「ホームランを打ちたい」と宣言した。何がホームランかというのを表現するのは難しいが、CPSの本質は何かを買ってもらい1度に数百億円の案件を受注するというものではない。サブスクリプション型で継続して顧客と関係を築き、価値を提供し続けるというモデルが目指すべき姿だ。
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その中で、継続的な契約が続くサービスの提供を開始することをホームランだと考えている。サービス化するとバリューを出し続けなければ契約更新が行われず、本当の意味で顧客価値が重要になる。継続的な関係を築くためには、顧客課題を見つけ出しつつ、価値を継続的に出し続けていくということが必要だ。それを実現できるようにしていく。
具体的にどのくらいの金額感であればホームランかというのは判断が難しいところだ。モノを売るのではなく、継続的サービスなので利益率は高くなるが、利益率で考えるべきなのか、ライフタイムの利益総額で考えるべきなのか、こうした指標については今社内で検討している。
「ユニークなハードウェア」が差異化のカギ
MONOist 東芝全体に見た場合、CPSでの勝ち筋をどのように描きますか。
山本氏 「東芝でCPSを進める」ということを考えると、どうしても過去から行ってきた「フィジカルの世界」から「サイバーの世界」に進むと見てしまいがちだ。「サイバー」や「データ」は確かに重要だが、CPSで価値を生むには、その言葉の通り「サイバー」と「フィジカル」を両立させるという点がポイントである。
CPSの世界になれば、デジタルプラットフォームの構築は必要条件ではあるが、これだけでは差異化にはつながらない。差異化するポイントは「データから得られる知見」と「ユニークなフィジカル」である。つまり、従来通りの「フィジカルだけ」の取り組みでも勝つことはできないが、「サイバーだけ」を強化しても勝つことはできない。
ここまでの取り組みでサイバー側の枠組み構築は進んできたと感じている。しかし、それだけでは十分ではない。経営会議などでも何度も「フィジカルの投資は続けなければならない」と訴えてきたが、「強いフィジカルの事業を持つ」というのがCPSの世界では大きな優位点だといえる。
東芝はもともと強いフィジカルの事業を数多く抱えており、そこを強みとして生かしていくべきである。そういう意味では、M&Aなどを通じて「フィジカル」の世界をさらに強化していくことも今後の大きなポイントになってくると考えている。
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