CPSの勝ち筋とは? “サービス連打”を目指す東芝の挑戦:製造業×IoT キーマンインタビュー(3/4 ページ)
「CPSテクノロジー企業」として再成長を目指す東芝。この再成長を支える技術基盤確立に力を注ぐのが、東芝 コーポレート デジタイゼーションCTO デジタルイノベーションテクノロジーセンター長の山本宏氏である。同氏の東芝での取り組みと、CPS時代に勝ち残るポイントについて聞いた。
サービスを連打できる技術基盤を構築
MONOist これらをベースにサービスを工場のように連続して生み出す「Toshiba IoT Service Factory(東芝 IoT サービスファクトリー)」の実現を目指していますが、具体的にはどのような取り組みになるのですか。
山本氏 CPSによるさまざまなサービスを連続で生み出していく姿を描いており、そのための土台となる技術基盤を構築する取り組みを進めている。連続でサービスを生み出すためには、毎回システムインテグレーションに大きな負担をかけるわけにはいかない。そこでプロセスを決めて標準化を進め、工場でモノを作るようにサービスが展開できる仕組みを作ることが必要だと考えた。デジタルの世界で標準化や部品化を進めていくという発想だ。
こうした考えは昔からあったもので特に新しいものではない。しかし、過去との違いはDockerやKubernetesの登場で「コンテナ(※)」が容易に活用できるようになった点がある。昔のコンポーネント化はソフトウェア設計者のためのもので楽になるものの毎回設計が必要となっていた。今は、コンポーネントの単位がUIやデータベース、サービスなども入った形で、これらが再利用可能な実装レベルのものになっていることが大きな違いである。
(※)コンテナ:コンピュータ仮想化の1つの方式で、稼働中のOSの一部を分離して隔離されたエリアを作り、そこでソフトウェアを駆動させる仕組み。マイクロサービスとの親和性が高い。
これらをフル活用し、サービス構築のオートメーション化を進めることがポイントだ。具体的には、3つの点で自動化や開発負荷軽減を進める。1つ目はクラウドのデザインパターンを適用するという点、2つ目が実行環境を「Terraform」で自動化するという点、3つ目が開発環境にCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)を採用し自動化を進めるという点だ。CI/CDは具体的には「Jenkins」を使う。
実行環境、開発環境にはこれらを活用することで自動化が可能となる。デザインパターンの完全な自動化はできないが、多くのベストプラクティスが既に存在するのでこれらを徹底的に使っていく。使えるものは何でも使い、負荷が小さく効率よくサービスを生み出せる手法と基盤、プロセスを作るというのが役割である。これらの仕組みを整え、世界最先端のサービスファクトリーを実現する。
APIや情報モデルでシステム間連携を推進
MONOist 複数のシステムが複雑に連携する形になると思いますが、その対応についてはどう考えますか。
山本氏 「ハバネロ」のようなデータ基盤の役割は重要だが、それだけではサービスを構築することはできない。各産業のノウハウや知見と組み合わせて初めてサービスを構築できる。そのため各産業個別の情報や機能についてはそれぞれのシステムで担い、システム間の連携でサービスを実現していく必要がある。しかし、毎回システム同士ですり合わせをし、インテグレーション作業を行うのは非効率であるため、基本的にはシステム間の連携はAPI(Application Programming Interface)に担わせる形で設計をしている。
サービス基盤については、現状では各インダストリー個別で運用しているが、DevOps(※)を行うことを考えると、今後はサービス基盤についても共通化していくことを検討している。
(※)DevOps:ソフトウェアの開発と運用を組み合わせた仕組み
また、データの運用については、IoTデータについては基本的には「ハバネロ」で行っているが、今後はIoT以外のエンジニアリングデータやさまざまなデータとの連携を考えている。ハバネロの次のバージョン(次期ハバネロ)では情報モデルを用意し国際標準規格を用いた情報モデル化を進める。それぞれのデータを情報モデルに当てはめていくことで連携できる仕組みを作る。設備の外観やデータを統合する統合設備情報モデルなども次期ハバネロで導入することを考えている。
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