再生目指す東芝が示した新たなIoT戦略とその勝算:製造業IoT(1/3 ページ)
東芝は技術戦略説明会を開催。東芝が目指す独自のIoTアーキテクチャ「Toshiba IoT Reference Architecture」を発表し、同フレームワークを生かして4つのIoTサービスを展開する方針を示した。
東芝は2018年11月22日、技術戦略説明会を開催。東芝が目指す独自のIoTアーキテクチャ「Toshiba IoT Reference Architecture」を発表し、同フレームワークを生かして4つのIoTサービスを展開する方針を示した。本稿では、以前から持つ社会インフラでの強みをベースとし、数々の要素技術を組み合わせ、どうデジタル変革に向かうのかを紹介した東芝 デジタイゼーションCTOの山本宏氏の説明内容を紹介する。
サイバーフィジカルシステムの意味
経営危機から脱し、新たな姿での成長を目指す東芝グループでは、製造業で培った強みと、産業分野でのデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)での強みを組み合わせた「サイバーフィジカルシステム(CPS)」を新たな価値として推進する方針を示す。
山本氏はサイバーフィジカルシステムの定義として、ドイツのacatech(ドイツ学術アカデミー)や、NIST(米国国立標準技術研究所)などの参照アーキテクチャなどをベースとして3つのポイントを示す。具体的には以下の3点である。
- CPSのデータソースは人、モノ、サービス(システム)の3つ
- CPSはサイバーとフィジカルの閉ループから構成される
- CPSは「システム」「システムオブシステムズ」「人」が要素として存在する。
山本氏は「CPSのループを実現する仕組みの中で、血液に相当するのがデータである。そのデータには3つのデータソースが存在する。デジタルツインはCPSの1つのユースケースであり、ユースケースには自動運転なども存在する」とCPSについての考えを述べる。
CPSそのものは新しい考えではないが山本氏は「昔からやっているという人もいるが、昔のCPSは目的が制御で狭い世界のものだ。今のCPSが異なるのはスコープがはるかに広く社会を巻き込むものへの変わっているということだ。従来のCPSが制御を目指したのに対し、新たなCPSではサービスを志向している点が違いだ。この2つを両立させることが重要だ。東芝はこの両方に対してアプローチできる点が強みだ」と現在の違いについて語る。
エンタープライズループとパブリックループ
東芝では、これら2つのCPSに基づき、先述したようなデータが巡るループとして2つのサービスループが存在すると定義。1つは企業内の情報活用の最適化を実現するエンタープライズループであり、もう1つが他社や他業界などを巻き込み、全体最適化をサービスで実現するパブリックループである。「エンタープライズループの典型的な取り組みがドイツのインダストリー4.0である。具体的なサービスとしてはリモート監視、アセットマネジメント、予防保全などが存在する。パブリックループは出荷された製品とのデータのやりとりで実現する制御とサービスである」と山本氏は語る。
これらを一元的に展開できる基盤として用意したのが、東芝独自のIoT参照アーキテクチャである「Toshiba IoT Reference Architecture(TIRA)」となる。
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