自動車業界と物流業界の経済的損失が深刻化か、新型コロナの影響予測レポート:製造マネジメントニュース
ローランド・ベルガー(Roland Berger)は新型コロナウイルス感染症による経済的損失の予測レポートを公開。自動車業界と物流業界への影響が特に甚大になるという。
ドイツのコンサルティング企業であるローランド・ベルガー(Roland Berger)は2020年3月12日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が及ぼす経済的影響についての予測レポートを公開した。同レポートでは新型コロナウイルス感染症が新たな経済危機の引き金になる可能性があると警告し、自動車や機械など業界別に経済的損失を予測している。
分析対象となった業界は「自動車」「機械」「物流」「製薬」の4つだ。レポートでは、これらのうち自動車と物流の2つについて経済的損失が大きくなると予測する。
自動車業界は2019年時点で既に業界全体が低成長に直面していたため、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が追い打ちとなり、深刻な経済的損失が発生する可能性が高い。
万が一、新型コロナウイルス感染症の影響が2021年まで続いて世界経済のリセッション(景気後退)が発生する場合、2020年の業界全体の粗付加価値(GVA)は事前予測よりも10.6%減少する可能性がある。2020年末で感染拡大が終息する場合でも、2.4%の減少が見込まれる。レポートは、特に2020年上半期は自動車の部品不足やサプライチェーンへの影響により、粗付加価値は著しく低下すると予測する。
物流業界は商流の変動がサービスの需要に直結するため、リセッション発生時は、2020年の粗付加価値は事前予測から6.1%減少する可能性がある。また世界主要地域のロックダウンが加速すれば、さらに損失が深刻化する恐れもある。
また機械業界においては、中国工場の閉鎖に伴って製品の供給量が減少する上、自動車業界の業績低迷により機械製品の需要が低下することから、2020年の粗付加価値は事前予測から4.0%減少すると見込まれる。
一方で製薬業界においては、サプライチェーン自体は大きな影響を受ける上、消費の手控えからOTC医薬品(家庭用医薬品など)の売り上げが減少するものの、手堅い需要が持続的に見込まれる。このことからレポートでは、リセッション発生時でも粗付加価値は事前予測から2.3%低下する程度にとどまると予測する。
なお、上記の予測は3月12日時点での情報に基づいたものであることに注意されたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 自動車の国内生産に新型コロナの影響広がる、スバルは17日間稼働停止
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大によって、日系自動車メーカーの国内生産拠点に影響が広がっている。乗用車メーカー8社全てが、操業停止もしくは稼働を減らすことを決めた。 - 新型コロナで日産ホンダスズキも国内工場を停止、ソニーとルネサスは海外で影響
新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響が国内製造業に広がっている。既にトヨタ自動車とマツダに続いて、日産自動車、三菱自動車、ホンダ、スズキも国内工場の操業を停止する。また、ソニーやルネサス エレクトロニクスも海外生産を中心に影響が出始めている。 - 新型コロナは「影響あり」が3分の2、収束時期は「半年から1年」を見込む
MONOist、EE Times Japan、EDN Japanのアイティメディア製造業向け3媒体は「新型コロナウイルス感染症のモノづくりへの影響に関するアンケート調査」を実施した。調査期間は2020年3月16〜25日で、有効回答数は217件。本稿では、その内容について紹介する。 - 日産ホンダの生産9割減の衝撃、新型コロナで日系自動車各社2月の中国販売は大幅減
日系自動車メーカー各社が2020年3月30日、同年2月におけるグローバルでの生産、販売実績を発表した。中国自動車市場への新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が鮮明に現れた。 - 欧州の自動車工場は新型コロナで3月末まで操業停止、需要急減と部品調達も要因に
欧州域内における新型コロナウイルス感染症の急拡大に対応するため、EUならびに各国政府が地域封鎖や外出制限、出入国の制限などを始めている。これらの政策に合わせて、欧州域内にある自動車メーカーの工場も操業を停止している。 - トヨタとマツダが国内工場を操業停止、新型コロナによる海外需要の急減に対応
トヨタ自動車とマツダが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大による海外市場の需要急減を受けて国内工場の生産調整を行う。トヨタ自動車は2020年4月3日から、5工場の7ラインで2〜9稼働日分操業を停止する。マツダは同年3月28日〜4月30日の期間、2工場で全日の操業停止もしくは昼勤のみ操業を行う方針だ。