住友ゴムがタイヤ製造で目指す工場データの「集中コントロールセンタ構想」:MONOist IoT Forum 大阪2020(後編)(5/5 ページ)
MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、TechFactoryの、アイティメディアにおける産業向け5メディアは2020年1月30日、大阪市内でセミナー「MONOist IoT Forum in 大阪」を開催した。後編では、住友ゴム工業 製造IoT推進室長 山田清樹氏と同社 製造IoT推進室 金子秀一氏による特別講演と、日本OPC協議会 マーケティング部会 部会長の岡実氏によるランチセッションの内容、さらにその他の講演内容について紹介する。
「モノからコトへ」、サブスクリプションの収益化を訴えたタレスグループ
タレスグループ(ジェムアルト/日本セーフネット)は「AI/IoT、ソフトウェアビジネスをサブスクリプションで収益化させる、製造業のデジタルトランスフォーメーション」をテーマに、製造業においてサブスクリプションサービスの収益化の意義について説明した。
タレスグループ ソフトウェアマネタイゼーション事業本部 シニアプリセールスコンサルタントの前田利幸氏は「製造業の大きな課題が人手不足と低い収益力である。これらを脱するためには新たなビジネスモデルを構築する必要がある。その1つの手段がソフトウェア収益化である」と考えを述べる。
そのためには、大量にモノを作って売るビジネスモデルから「顧客体験」を価値としたビジネスモデルへの転換が求められている。デジタル技術を駆使することで、顧客体験をソフトウェアやデータとして提供できるようになっている。前田氏は同社のユーザーの事例として、シスコシステムズやシャープなどの事例を紹介。「顧客体験を強化する取り組みを進めると収益を拡大できるだけでなく、無駄な問い合わせ対応も削減できるため、コストも削減できる。そのための基盤整備が必要だ」(前田氏)としている。
IoTと5Gで描く新たなデジタルビジネスの生み出し方を描くKDDI
KDDIは「IoTから5Gへ 〜つながりつづける世界でのビジネスデザインとは〜」をテーマとし、IoTや5G、AIなど新たな技術の進化による変化の中で、新たなビジネスやサービスを生み出すための仕組みや手法について紹介した。
「KDDI DIGITAL GATE」は、新たなビジネスや価値創出をデザインしプロトタイプの構築や検証を素早く実行できるビジネス開発拠点である。2018年9月に東京、2019年秋に大阪と沖縄に設立され、デザイン思考をベースとしたワークショップやアジャイル開発チームによるプロトタイピングなど、新たなビジネス開発やその支援に取り組んでいる。
KDDI 経営戦略本部 次世代基盤整備室 KDDI DIGITAL GATE大阪 ビジネスデザイナーの宮永峻資氏は「IoTや5Gなど技術が目覚ましい進化を遂げる中で重要になるのは『ユーザーが使うサービスを世に送り出すこと』だ。ビジネスモデルを出すということではない」と語る。
米国のデザインファームとして著名なIDEOではイノベーションをもたらす3つの要素として「ビジネスの妥当性」「有用性」「技術的実現性」を挙げているが、KDDI DIGITAL GATEでは「まずユーザーの課題を解決する『有用性』があるかどうかを洗い出し、そこからソリューションの形を作っていく。その後ビジネスの妥当性を検討し、最後に技術的実現性を検討する」(宮永氏)。
KDDI DIGITAL GATEでは、このユーザーの理解、発散、決定、試作、検証の5つのプロセスを合計5日間で回転させ、約1週間でそのビジネスモデルが本当に価値があるかどうかユーザーにヒアリングを行うところまで行うという。「日本企業の多くは技術から入る場合が多いが、技術進歩だけでイノベーションを起こすのが難しい時代に入っている。違うアプローチが必要だ」と宮永氏は語っている。
製造業向けAR/VRがビジネス段階に入ったことを訴えたPTC
PTCジャパンは「離陸するファクトリーAR 〜業務利用の現在地と今後の課題〜」をテーマとし、製造業のさまざまな現場でAR(Augmented Reality:拡張現実)活用が本格化し、既にビジネスベースに乗りつつある点を訴えた。
PTCでは、「Vuforia」ブランドでARソリューションを早期から展開しているが、PTCジャパン 製品技術事業部 プラットフォーム技術本部 本部長 執行役員の山田篤伸氏は「ARの歴史は長いが業務利用として本格的に使われる転換期となったのが2019〜2020年だったと数年後に振り返ることになるだろう。少し前はエンタテインメント用途が中心で、2018年頃までは産業用ではパイロットプロジェクトが中心だったが、産業用途での本格導入が一気に増えた」とAR事業の手応えについて語る。
同社ではARとVR(Virtual Reality:仮想現実)の位置付けについて「ARは『現場から離れられない人のための技術』で、主に現場で利用するもの。一方のVRは『現場に行けない人のための技術』で、主に遠隔で利用するものだ」と山田氏は語る。こうしたことを背景に、AR技術の活用については製造業務、保全・修理業務で導入が進んでいるという。「具体的には主に3つの使い方で利用されている。1つ目は作業手順の指示、2つ目が遠隔支援、3つ目がトレーニングだ」(山田氏)。これにより作業者の生産性と安全性の確保や、事業効率や収益性の改善などが実現できるという。
ただ、導入に向けての課題として4つの点に注意が必要だ山田氏は述べる。「1つ目はIoTデータとの連携だ。ARはIoTデータと組み合わせることで効果を発揮するが、この連携が難しい場合も多い。2つ目がクラウドの準備である。ARはマーカーが必要となるが、マーカーの画像認識を行う場合、AIエンジンが必要になる。これにはクラウドのリソースが必須だが、そこまで想定できていない場合が多い。3つ目が、ユースケースだ。どう使うかというのは現場で考えなければ難しい。その仕組みがあるかどうかを考える必要がある。そして最後が、デバイスを固定化しないということだ。現状ではデバイスの進化が早く、陳腐化する可能性があるからだ」と山田氏は述べている。
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