進むプロセス産業のデジタル変革、DX支援企業の立ち位置目指すAVEVAの挑戦:製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)
プラントや造船業界向けのCADソフトなどを展開するAVEVAは、シュナイダーエレクトリックのソフトウェア部門との合併により、製品ライフスタイル全域をカバーしデジタル変革を支援する総合ベンダーへと転身を図っている。日本での取り組みについて、AVEVA日本法人の日本統括代表である小暮正樹氏に話を聞いた。
プラントなどプロセス製造業のデジタル変革動向
ここからは、具体的な日本での取り組みについて、小暮氏へのインタビュー内容を紹介する。
MONOist DX支援企業としての位置付けを確立するとしていますが、日本におけるプロセス製造業のデジタル変革への取り組みについてどう見ていますか。
小暮氏 現状では顧客企業によって大きく状況は異なるといえるだろう。進んでいるところは専門部署を設立しロードマップなどを定めてさまざまな取り組みを具体的に進めている。一方で、全く関心のない企業があるのも現実だ。
もともと、プロセス製造業では、工程内でさまざまなデータを取得してきた。さまざまな製造業種と比べても、データ量は膨大なものを既に持っているといえるだろう。しかし、その活用を企業全体としてどうするかという検討はやや遅れているといえる。今までは現場でオペレーターがこれらのデータを活用し、“熟練の技”で高品質、高精度を維持して製造し続けてこられた。しかし、将来的に労働人口が減少する他、プロセス製造業もグローバル化を今後ますます加速させる流れの中で、従来通り、ルーティンワークまで人手に頼るやり方では限界が見えている。人手に頼らなくても実現できる点については、デジタル化を進め、ツールを活用することで、効率化していくことが求められている。こうしたニーズに応えていきたい。
「保全」を基軸に日本での浸透を推進
MONOist DXをいきなり提案しても難しいと思いますが、AVEVAとしてどういうところを重視するつもりですか。
小暮氏 「保守」や「保全」の高度化や効率化を1つの軸として提案していくつもりだ。欧米では既に多くの実績があるが、これらの領域に対し、デジタル技術を使って効率的に運用していく動きは日本ではまだこれからだと考えている。高品質なモノづくりを推進してきた日本の製造業ではなかなか保全に投資をする文化がなかったと感じているが、設備の老朽化が進んでいることや、政府が進めるプラントのスマート化に向けた「スーパー認定事業所制度」などへの取り組みもあり、徐々に浸透し始めている。
特に国内においては、プラントのような大規模な工場を新設する動きはほとんどなく、さらに既存設備も老朽化が進んでいるところがほとんどだ。ただ、今後人口が大きく増える状況でもなく、大型投資は見込めない。既存設備を、投資を控えながらどれだけ長く使っていけるかが多くの工場での課題だといえる。そこで保全が重視される環境が生まれてきた。
多くの製造業では「止まらない工場」への期待は高い。事後保全、計画保全、予知保全、状態基準保全などさまざまな保全方式があるが、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)の進化により予知保全や状態基準保全のレベルは従来に比べて大きく上がってきている。必ずしもこれらの保全方式が全てではないが、企業の保全戦略に合わせて選べる選択肢は増えてきている。こうした機運を受けて、まずは「保全」をターゲットに提案を進め、そのデータを軸に周辺の部門およびシステムとの連携を進め、デジタル変革へと進める提案を行う。
シナジー効果を最大化へ
MONOist 今後の目標について教えてください。
小暮氏 日本での売上高の4割がCADとなっているが、この占有率を減らし、保全領域での販売を伸ばしていきたい。海外では非常に多くの業種で導入しているが日本ではまだまだ認知度も低く、これらを総合的にカバーできる点を訴えていきたい。
従来AVEVAは設計部門やIT部門中心の提案となっていたが、シュナイダーエレクトリックとの一体化により、それぞれの持つポートフォリオと営業ルートを掛け合わせて、総合的に拡大していくことを目指していく。まずは顧客企業にこれらのポートフォリオを基に、困りごとを聞く活動を進めている。合併以降前年比10%以上の成長を続けており、シナジー効果も徐々に生まれつつある。こうした実績をさらに広げていきたい。
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