プラントスマート化へ新認定制度開始、築40年以上が2025年には8割以上に:スマートファクトリー(1/2 ページ)
経済産業省は、高圧ガス関連施設の自主保安の強化を進めるために、IoT活用などを条件にした新認定事業所制度を2017年4月に開始する。
米ハネウェル(Honeywell、日本法人ハネウェルジャパン)のプロセスソリューションズ部門(HPS)は2017年2月22〜23日、横浜市でパートナーイベント「2017 ジャパンテクノロジーサミット」を開催。同イベントでは、経済産業省 商務流通保安グループ 高圧ガス保安室長の高橋正和氏が登壇し、「高圧ガス保安のスマート化について」をテーマに基調講演を行った。
プラントでの重大事故は増加傾向
高圧ガス関連施設の事故は増加傾向にあるという。高橋氏は「2015年の事故件数は729件でそのうち人身事故件数は48件だった。爆発などの事故はそれほど多くないが、冷媒の漏えいなど、噴出や漏えい事故はここ10年で増加傾向にある」と述べている。
事故の原因については、ハード面では腐食や検査不良など設備の維持や管理不良を原因としたものが多く、ソフト面ではヒューマンエラーなど人的な要素による原因が多いという状況である。
さらに別の側面での課題もある。設備の老朽化と熟練技術者の不足である。日本で高圧ガス保安が必要なプラントの多くは老朽化が進んでおり、2015年時点で稼働中のエチレンプラントの58.9%が稼働年数40年以上となっている。さらに2025年にはこの比率は81.4%まで上昇する。一方で、従業員についても2014年時点で石油精製事業所の34.6%が51歳以上となっており、10年後には3分の1が引退という状況を迎える。
高橋氏は「こうしたリスクに備えながら、サプライチェーン全体の高度化という要求にも応え、さらに事故を減らすということを考えると、人の能力を補完するものとして、IoT(モノのインターネット)やビッグデータを活用することが必要になる。プラントのスマート化を実現することで、自主保安力を高め事故原因を減らしていくことが重要だ」と語る。
プラントのスマート化に必要な技術
例えば、プラントの事故では、以下のような流れで実際に事故が生まれる。これは実際の事故の例だが、製造タンクの緊急放出弁が故障し、開いたままになったことで、タンクの反応量が低下。その結果、作業員が反応促進のために加熱し、タンク内で反応が起こり、爆発に至った。作業員は長時間反応の間も異常に気付かなかったという。
ここではいくつかの課題が見える。設備面では弁の故障を認識できなかったという点、運用や管理面では作業手順やノウハウを形式知化できていなかった点や異常に気付けなかったという点だ。
高橋氏は「こうした事故を、センシング技術の活用や、作業支援システム、異常の早期検知、重要アラームの絞り込みなどの技術を使って、解決していくことが求められる」と技術への期待を語る。
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