エッジは強く上位は緩く結ぶ、“真につながる”スマート工場への道筋が明確に:MONOist 2020年展望(3/3 ページ)
IoTやAIを活用したスマートファクトリー化への取り組みは広がりを見せている。ただ、スマート工場化の最初の一歩である「見える化」や、製造ラインの部分的な効率化に貢献する「部分最適」にとどまっており、「自律的に最適化した工場」などの実現はまだまだ遠い状況である。特にその前提となる「工場全体のつながる化」へのハードルは高く「道筋が見えない」と懸念する声も多い。そうした中で、2020年はようやく方向性が見えてきそうだ。キーワードは「下は強く、上は緩く結ぶ」である。
OPC UAのコンパニオンスペックと団体連携の動き
ドイツのインダストリー4.0が推奨通信規格と位置付けている「OPC UA」は、「産業用アプリケーションの相互運用を実現するオープンインタフェース」である(※)。特徴はプラットフォームへの非依存や拡張性だ。プラットフォーム依存がないため、さまざまな規格の通信情報をシームレスに扱うことができる。マイクロコントローラーからクラウドサービスまで利用可能であり、コントローラー間ネットワークと情報系ネットワークなどを結ぶ通信技術として最適だとされている。
(※)関連記事:「OPC UA」とは何か
この拡張性を生かし、OPC UA内の「情報モデル」に通信プロトコル間の連携を定義する「コンパニオンスペック」を用意。異なるプロトコル間でも情報連携を行うことができる。OPC UAを推進するOPC Foundationでは2019年4月に「第1回 World Interoperability Conference」を開催し、このコンパニオンスペックを生かした工業団体規格との連携を訴えたが、そこには350人以上が参加したという。
その中で注目された動きの1つが、ドイツの工作機械工業化(VDW)が推進する「umati(ユマーティ)」である。これは「工作機械がネットワークを介してシステムと接続しデータ交換をするための共通のインタフェース規格」である。OPC UAのコンパニオンスペックなどを活用することで工作機械固有のさまざまな稼働情報などを定義し、工場内にある工作機械から必要なデータを「OPC UA」を通じて集めることができる(※)。
(※)関連記事:工作機械の共通インタフェース「umati」とは何か?
「umati」は2017年の国際工作機械見本市「EMO2017」で発表され、2019年の「EMO2019」では、110台の工作機械を接続し、実用化へと進んでいることを示した。
また、射出成形機向けでは、EUROMAP規格の中で「EUROMAP77」や「EUROMAP88」などの規格が「OPC UA」対応規格として推進されつつある。2019年11月にはこれらの規格をOPC規格に組み込むという動きも出てきており、業種別や役割別で策定したデータフォーマットをOPC UA経由でつなぎ、上位システムと連携させるという動きが具体的な動きとなっているのである。
こうした個別のフォーマットを連携させる取り組みについては、日本でも進んでおり、経済産業省による「Connected Industries推進のための協調領域データ共有・AIシステム開発促進事業」の委託を受けたIVIが、ジェイテクト、DMG森精機、三菱電機、安川電機、SCSK、ビジネスエンジニアリングアプストウェブなどと協力し、「製造業オープン連携フレームワーク(CIOF)」の開発を進めることを発表している(※)。
(※)関連記事:乱立する製造IoT基盤は連携する時代に、IVIが製造データ連携フレームワーク披露
エッジは厳密に、上位は緩く
これらの特徴は、上位のシステムとの連携はあえて“緩く”していることだ。OPC UAは国際標準規格となっており、誰でも利用が可能である他、CIOFも辞書の定義さえできれば、さまざまなデータを“翻訳”して活用できる。
工場などリアルタイム性が要求される領域では、部分最適化された厳密なデータサイクルが必要になるが、上位のシステムはそこまでの高速性や高精度が要求されるわけではない。そういう意味では、現場では部分部分で「つながる化」を実現しつつ、上位はこれらの規格を使いながら“緩く”結んでいくというのが、現実的なスマートファクトリーへの道筋ではないだろうか。2019年はその方向性とさまざまな材料がでそろってきた1年だった。2020年はさらにこれらを具体化する動きが広がると見ている。
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