2019年の深センから見た、ハードウェアスタートアップシーンの今:現地レポート(3/3 ページ)
世界中から多くのスタートアップ企業が集まる中国・深セン。「アジアのシリコンバレー」とも称されるこの地に拠点を置くスタートアップと、彼らを支援するベンチャーキャピタル(VC)、そして消費者視点で見た深センの街並みを取材した。
深センがスタートアップ都市であり続ける理由
今回取り上げた2社は、深センのスタートアップエコシステムのごく一部を紹介しただけにすぎないが、工場やサプライチェーンだけでなく、VCやアクセラレーターなど資金面や事業面を支える企業も集まり、「アジアのシリコンバレー」にふさわしい都市であり続けている。
大企業の生産拠点が深センから東南アジアに移転する傾向にはあるが、千個単位以下で安く早く作りたいスタートアップの需要を支えるのは、依然として深センや東莞を中心とした珠江デルタ地域だ。
数年前までは中国の工場に直接交渉を試みるも、商慣習や言葉の違い、そして工場独特の文化から苦戦を強いられるスタートアップが多く見受けられた。
しかし、現在では中国での量産をスタートアップ向けにアレンジする中間業者や、HAXのような工場とのネットワークを持つアクセラレーターがスタートアップをサポートしている。また、ジェネシスホールディングスのような日本人経営者による生産、組立工場がスタートアップの量産を請け負うケースもあり、スタートアップと中国の距離感は着実に縮まっているようだ。
品質の面でも、厳しい基準を設けている海外の大手企業との取引実績をアピールする工場も増えた。そういった工場は品質にバラつきのあるサプライチェーンをうまく使い分けながら、不良品率を減らしたり、金型製造後の射出成形で利益を上げることで、金型製造費を安く抑えたりと、さまざまな工夫をこらしている。
IoT(モノのインターネット)の影響も大きい。データの処理がチップではなくクラウドに移り、高度な機械学習のプラットフォームをGoogleやAmazonが提供するようになったことで、ハードウェア側の負担は劇的に下がった。
それに伴いハードウェアの構成は、非常にシンプルになった。安価なモジュールや部品がそろう深センのサプライチェーンで部品を調達し、現地工場で金型や基板を製造して、組み立てるといったことも可能で、出来上がる製品の幅は広がった。
こうした環境が海外からスタートアップを呼び寄せると同時に、中国国内からも成長著しい企業を育てることを可能にしている。ユニコーン企業からスピンアウトして、新たな製品を開発する中国発スタートアップも続々生まれている。
2020年以降、深センの力を借りて、どのようなスタートアップが世界中でイノベーションを起こすのか。同時に中国国内のスタートアップシーンはどのように変化するのか。機会があればレポートしたい。
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