2019年の深センから見た、ハードウェアスタートアップシーンの今:現地レポート(2/3 ページ)
世界中から多くのスタートアップ企業が集まる中国・深セン。「アジアのシリコンバレー」とも称されるこの地に拠点を置くスタートアップと、彼らを支援するベンチャーキャピタル(VC)、そして消費者視点で見た深センの街並みを取材した。
ハードウェアスタートアップ専業の「HAX」
UBTECHがある南山エリアは、深センの中でもITを中心としたビジネス街だが、そこから地下鉄で30分ほど東に移動すると、メディアでもたびたび登場する巨大電気街「華強北」がある。秋葉原を参考にしたという街中には電子部品だけでなく、通信機器やドローン、ロボットなどの完成品からLEDモニターが背面に搭載されたリュック(バックパック)のようなガジェットまでそろう。
その華強北の中心にあるインキュベーション施設「Black Ark」は、7階建て、約2万m2の延べ面積の中に、50社以上のスタートアップやベンチャー企業が入居する。
米国のVCであるSOSV Investmentsが運営するハードウェアスタートアップに特化したシードアクセラレーター「HAX(ハックス)」は、このBlack Arkの中に拠点を構える。
ハードウェアスタートアップに特化した投資とアクセラレーションプログラムを提供するHAXの深センオフィス。運営母体のSOSV Investmentsは、ディープテックやヘルスケア領域など、幅広いテック領域に投資するVCだ[クリックで拡大]
ワンフロアを貸し切ったHAXのオフィスには、運営スタッフのオフィスや100人以上が収容できるイベントスペース、さまざまな機器が並ぶ工房、そして約40のスタートアップ用の個室が用意されている。
主に産業分野のスタートアップを支援していることもあり、オフィスで開発されている試作品も自律走行ロボットや大規模農業用の機器など、サイズの大きなものが目立った。
日本でもスタートアップ向けのコワーキングスペースやインキュベーション施設の中に個室を設けている事業者はいるが3〜5人分のスペースが中心だ。都市圏の中心で広いスペースを確保したくても、スタートアップには手が出ない価格帯であることが多い。それに比べるとHAXのオフィスは創業間もないスタートアップが入居するには十分過ぎる環境が用意されている。
もちろん、これだけの環境を手に入れるのは容易なことではない。入居するためにはHAXのアクセラレーションプログラムへの採択が必須であり、採択率は3〜4%という狭き門をくぐり抜ける必要がある。2019年から住友商事とSCSKとの共同運営で、HAXに採択されるための予備予選的なプログラム「HAX Tokyo」が日本でも開始されているので、今後は日本からも採択される企業が増えていくかもしれない(関連記事:国内企業とスタートアップのマッチングを加速、日本版「HAX」が目指すもの)。
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