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メーカーなのに試作できない――「社内での作りづらさ」から開放する社外コミュニティーの存在DMM.make AKIBAを支えるプロフェッショナルたち(3)(1/2 ページ)

さまざまなモノづくりを支援するDMM.make AKIBAの運営に携わる人たちにスポットを当て、世の中にないものを生み出そうとする現場の最前線を追う。最終回となる第3回は、コワーキングスペースには欠かせない「コミュニティー」の在り方を通じて、多くの企業が抱える試作開発の課題に迫る。

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 2019年11月で5周年を迎えるDMM.make AKIBAの“裏側”を紹介する連載。最終回となる第3回は、コワーキングスペースには欠かせない「コミュニティー」の在り方を通じて、多くの企業が抱える試作開発の課題に迫る。

 会員同士をマッチングさせたり、外部の企業を紹介したりするのが、コワーキングスペースのコンシェルジュともいえるコミュニティー担当者たちの役割だ。モノづくり分野におけるコミュニティー運営の現状を取材した。

メーカーなのに、社内で開発できない

DMM.make AKIBA コミュニティマネジメントグループの橋場光央氏(左)と平林愛子氏(右)
DMM.make AKIBA コミュニティマネジメントグループの橋場光央氏(左)と平林愛子氏(右)[クリックで拡大]

 DMM.make AKIBAに限らず、多種多様なユーザーが集まるコワーキングスペースにとって、重要なミッションの1つがユーザー同士やネットワーク上にいるパートナーをマッチングさせることだ。

 コワーキングスペースの窓口には毎日さまざまな相談が持ち掛けられる。「新しいプロジェクトを任されたが、社内のリソースだけでは不安だ」といった漠然としたものから「IoT(モノのインターネット)サービスを立ち上げることになったが、サブスクリプションで提供する場合の業務設計が分からない」といったピンポイントなものまで、相談内容の幅も広い。

 DMM.make AKIBAでユーザーコミュニティーを管理するコミュニティマネジメントグループの橋場光央氏、平林愛子氏によれば“社内でプロトタイプの開発がしづらくなっている”といった相談が大企業から増えているという。

 「社内でできるのは仕様書まで、実際の試作や開発は外部に出すという開発方針に切り替えた結果、試作開発する環境が社内からなくなってしまったというケースや、あったとしても予算が潤沢にある特定の部署しか利用できないといった問題から、DMM.make AKIBAを利用したいという相談が年々増えています」(橋場氏)

 また、熱を発するはんだごてがオフィス内では使用できない、開発環境がそろった拠点は地方にあって使いづらい、仮に行けたとしても就業時間外は試作開発用の施設が使えないといった理由から、DMM.make AKIBAのような外部施設の利用を検討するユーザーも少なくないという。

 「従来の企業で当たり前にできていたことが難しくなった上に、外部とのオープンイノベーションにおいても社内の文化とのあつれきに悩むケースも多いように感じます。社外のミートアップイベントで自分たちがやろうとしていることをプレゼンしたくても、社外秘で一切話せずにいるケースや、試作するにも『Raspberry Pi』のようなオープンソースハードウェアを知る人もいなくて、担当者が社内説得に苦労するケースもあります」(平林氏)

新しいことを求められているのに、外と中のギャップに悩む

橋場コーヒー
DMM.make AKIBAのコワーキングスペースにあるハンドドリップコーヒーの無料提供サービス、通称「橋場コーヒー」。会員がドリンクを飲みながら気軽に雑談や相談しやすいよう、最近始めた取り組み[クリックで拡大]

 外部からの新たな刺激を取り込もうにも社内文化とのギャップが大きく、どのように説得すべきか悩む企業担当者も少なくないという。DMM.make AKIBAでは「研修」という企業が受け入れやすい形で、IoTプロダクトの開発やオープンソースハードウェアを使ったプロトタイピングの基礎を刷り込ませるといった提案もしている。

 「社内のマインドを変えるというのは、一朝一夕でどうにかなるものではないので長期戦は避けられません。研修を導入する以外にも、年に数回社員や上司を連れて、施設見学に訪れる法人会員の方もいます。時間をかけて少しずつ情報をインプットし、マインドを変えるきっかけ作りをやめないことが重要です」(平林氏)

 本来、大手から中堅レベルの企業であれば、DMM.make AKIBAよりも高度な機材をそろえているはずだ。しかし、それが何かしらの理由で使えないのであれば、外部の施設を使うのも有効だろう。例えば、企画を通すための試作など予算が限られている時期だけDMM.make AKIBAを利用することで、それまで無駄にかかっていた時間を短縮するという使い方もあると橋場氏は話す。

 「特定の技術領域に特化して深掘りしたい人と、新しいものを作りたい人であれば、後者との相性がいいのが私たちの施設です。さまざまなエンジニアやスタートアップと知り合ったり、イベントを通じてアイデアの種を見つけたりして、自分自身も何かしらの情報を発信していきたい人には、オススメできる場所になったと思います」(橋場氏)

 自分のオフィスとは別にあるコミュニティーを積極的に活用することで、モノづくりの苦労や課題を乗り越えてほしいと橋場氏は話す。

 「機密保持の問題からコワーキングスペースでの開発にちゅうちょしているという相談を受けることもありますが、“パーツ単位での試作開発であれば問題ない”というのが私たちの見解です。DMM.make AKIBAというと工房や機材が注目されることが多いのですが、そこに集まる企業や個人とのつながりも大きな資産です。自社内での開発に何かしら課題を感じているのであれば、まずは手ぶらでもいいので相談に来てほしいですね」(橋場氏)

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