「自動運転のコストは必ず下がる」、AVCCが非競争領域の成果を2025年モデルに:自動運転技術(2/2 ページ)
2019年10月に発足を発表したAVCC。新たにルネサス エレクトロニクスや、Autoliv(オートリブ)から分社化したエレクトロニクス関連のVeoneer(ヴィオニア)も加わった。自動車メーカーや大手サプライヤー、半導体メーカーが、日米欧から集まった格好だ。どのように自動運転のコストを下げるのか。
トヨタがAVCCに期待すること
Armの日本法人アームが2019年12月6日に開いたユーザーイベント「Arm Tech Symposia 2019」の基調講演には、トヨタリサーチインスティテュートアドバンストデベロップメント(TRI-AD)のバイスプレジデントである谷口覚氏が登壇。「競合関係にある会社が集まり、大きな課題を解決するためにリソースを集めることが効果的だと協力に合意できたのが大きなポイントだ」とAVCCの意義を語った。
トヨタ自動車としてAVCCに期待するのは、複雑なテクノロジーへのチャレンジの負担を軽減すること、リファレンスとなるモデルやプラットフォーム、APIによって低コストに自動運転車を開発できるようにすることだという。また、AVCCをイノベーションを目指す共通プラットフォームとして育てていくことも重要だとしている。
自動運転車開発の課題について、谷口氏は「地域によって異なるレギュレーション、時間帯や天候によって変化する多様な走行環境に合わせて、ソフトウェアの規模が肥大化している。これに伴ってSoC(System on Chip)への要求性能が上がり、消費電力も上がる。冷却システムの追加でコストがアップすることも課題で、消費電力は空冷でカバーできる30W以下を考えている。性能向上と消費電力や熱の低減、システムを大型化しないといった背反する要素をいかに両立できるか、AVCCで議論する」と語った。
また、自動車メーカーが差別化したいのは、深層学習(ディープラーニング)のネットワークを使った自動運転の認識や制御のアルゴリズム、そのアルゴリズムのためのデータ、学習を効率的に進めるためのパイプラインだという。その一方で、「個社で開発ツールやECUのハードウェアについて相談するのは効率的ではない。ソフトウェアの実装のためのツールは非競争領域でもいいと考えている」(谷口氏)とみている。
谷口氏は、自動車メーカーの設計資産を有効活用するための、ポータビリティ(移植性)、インターオペラビリティ(相互運用性)、スケーラビリティ、フレキシビリティの担保にAVCCが貢献することにも期待を寄せた。「自動運転にはさまざまなレベルがあるが、ACC(アダプティブクルーズコントロール)や自動駐車、ADAS(先進運転支援システム)でのセンサーの認識やクルマの制御と似通っている部分がある。幅広い商品を効率よく設計できることもAVCCで議論している」(谷口氏)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ≫連載「Arm最新動向報告」
- 自動車メーカーらで完全自動運転車のコンピュータアーキテクチャを共同開発
自動車メーカーと大手サプライヤー、半導体メーカーらは2019年10月8日、「Autonomous Vehicle Computing Consortium(AVCC)」を立ち上げ、完全自動運転車の実現に向けて協力すると発表した。自動運転に必要な共通のコンピュータアーキテクチャを開発し、安全性が高く低価格な自動運転車を普及させることを目指す。 - ソフト開発は「ツールとインフラが9割」、トヨタの先行開発会社が重視すること
トヨタ自動車、デンソー、アイシン精機の共同出資会社であるToyota Research Institute Advanced Development(TRI-AD)は2019年1月30日、東京都内で事業説明会を開いた。 - 完全自動運転を量産するカギは「SoCの仮想化」、Armが数週間以内に新製品
Armの日本法人アームは2018年12月6日、ユーザーイベント「Arm Tech Symposia 2018 Japan」の開催に合わせて記者説明会を開き、自動運転分野での取り組みを説明した。Armでオートモーティブソリューション&プラットフォームディレクターを務めるロバート・デイ(Robert Day)氏は、レベル4以上の自動運転車でシステムを、現実的なコストと消費電力で実装することと、安全性の向上に注力していくと述べた。 - 自動運転車を“展開可能”にするのはArm、「自動車業界からの信頼も厚い」
Armが車載分野向けの事業戦略について説明。「車載分野で事業を展開して既に20年の実績がある。今やADASにはほぼ必ずArmのプロセッサが入っており、自動車メーカーやティア1サプライヤーからの信頼も厚い」(同社)という。 - Armは自動運転向けプロセッサの覇権を握れるか、本命は5nmプロセス
2018年後半に入って急激に動きを活発化させているArm。本連載では同社の最新動向について報告する。第3回のテーマは、「Arm TechCon 2018」でも地味ながらかなり力を入れていた自動車関連の取り組みを紹介する。 - 車載分野への浸透広げるARM、大手車載マイコン3社も採用へ
スマートフォンや汎用マイコンのプロセッサコアとして最も広く採用されているARM。車載分野では長らく苦戦していたが、ついにルネサス、フリースケール、インフィニオンという車載マイコントップ3の採用にこぎつけた。車載分野での浸透と拡大を着実に続けるARMの取り組みについて、同社のリチャード・ヨーク氏に聞いた。