完全自動運転を量産するカギは「SoCの仮想化」、Armが数週間以内に新製品:車載半導体
Armの日本法人アームは2018年12月6日、ユーザーイベント「Arm Tech Symposia 2018 Japan」の開催に合わせて記者説明会を開き、自動運転分野での取り組みを説明した。Armでオートモーティブソリューション&プラットフォームディレクターを務めるロバート・デイ(Robert Day)氏は、レベル4以上の自動運転車でシステムを、現実的なコストと消費電力で実装することと、安全性の向上に注力していくと述べた。
Armの日本法人アームは2018年12月6日、ユーザーイベント「Arm Tech Symposia 2018 Japan」の開催に合わせて記者説明会を開き、自動運転分野での取り組みを説明した。Armでオートモーティブソリューション&プラットフォームディレクターを務めるロバート・デイ(Robert Day)氏は、レベル4以上の自動運転車で、システムを現実的なコストと消費電力で実装するとともに、安全性の向上に注力していくと述べた。
デイ氏は「自動車業界はレベル3の自動運転に対してどちらかというと懐疑的だ。レベル3で認められているのはハンズオフだけだが、ステアリングから手を離すということは、視線や意識も運転から離れるということにつながり、いざというときに運転を人に戻すのが難しくなる。そのため、レベル4〜5の自動運転に開発が移行するのが早まっている」と自動運転の開発動向を説明した。
レベル4〜5の車両について、デイ氏は「自動運転には正しい判断と動作を実現するための演算性能が不可欠になる。ただ、自律性が高まるほど高い演算性能が求められる。しかし、それらに求められる数kWという消費電力を、数百Wまで下げる必要がある。システム全体のコストを見ても、センサーなどを含めて10万〜100万ドルのレベルは現実的な実装ではない。そのためには、パフォーマンスを向上しながら消費電力とコストを下げなければならない。また、今の自律運転車は、緊急時に対処できるドライバーが中にいる前提になっているが、実装可能なものだとはいいがたい。運転に対処する人がいない前提で安全が組み込まれているべきだ」と述べる。
こうした開発動向を受け、安全な実装と、コストや消費電力の低減を同時に実現する自動運転対応のプロセッサとして、同社は2018年9月に自動運転対応の最新プロセッサ「Arm Cortex-A76AE」を発表している。また、今後数週間以内に自動運転車向けの新製品を発表するとしている。
AEは、「Automotive Enhanced」を意味し、車載要件を満たす専用の機能を搭載したグレードとなる。消費電力はCPUコアレベルで15W、SoCでは30Wまで抑える。これにより、自動車業界がレベル4〜5の自動運転システムに対して求める数百Wレベルまで消費電力を低減できるとしている。もう1つの特徴は、CPUクラスタを複数に切り分ける仮想化技術「スプリット・ロック(Split-Lock)機能」だという。
スプリット・ロック機能は、たくさんのアプリケーションを実装する自動運転車に向けたものだ。1つのSoC(System on Chip)に安全要求レベルに差があるソフトウェアを同時に実装できるようにした。用途の1つはHMI(ヒューマンマシンインタフェース)だ。RTOSによって動作するメーター表示と、Linuxなどで動作する車載情報機器を切り分けることにより、安全にそれぞれのソフトウェアを更新したり、継続が必要な動作を維持したりする。
今後、ECU(電子制御ユニット)の統合が進む中でもスプリット・ロック機能が重要になるとデイ氏は説明した。「ドメインコントローラーは、安全要求レベルが高い機能と低い機能が混在する中で制御する必要がある。センサーの冗長化も進むが、全て同じレベルの安全要求水準ではなく高低がつく。また、OSの中には必ずしも安全と言えないものもあるため、切り分けられることは重要だ」(デイ氏)。
スプリット・ロック機能は、独立したCPUをさまざまなタスクや用途で利用できるようにするスプリットモードと、ロック状態のCPUを生成する安全性の高いロックモードに分かれている。上位で動作するソフトウェアはどちらのモードであるかを認識する必要がなく、開発したソフトウェアの実装も容易になるとデイ氏は説明した。
Armは、自動運転車のソフトウェアが機能安全を満たすためのエコシステム「Safety Readyプログラム」によって、自動車メーカーやサプライヤーの開発コスト低減にも取り組んでいる。同プログラムでは、認証を受けたツールや開発向けのドキュメント、自動車向け機能安全規格であるISO26262に準拠した認証も提供する。
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