仮想化なしで次世代と現行のAUTOSAR混在環境が可能に、オーバスが開発中:オートモーティブワールド2018
デンソー子会社のオーバスは、「オートモーティブワールド2018」において、次世代AUTOSARであるAUTOSAR Adaptive Platform(AP)に対応するOS「AUBIST Adaptive OS POSIX」のデモンストレーションを披露した。
デンソー子会社のオーバスは、「オートモーティブワールド2018」(2018年1月17〜19日、東京ビッグサイト)において、次世代AUTOSARであるAUTOSAR Adaptive Platform(AP)に対応するOS「AUBIST Adaptive OS POSIX」のデモンストレーションを披露した。
車載ソフトウェアの標準規格であるAUTOSARでは、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転システムに用いるインテリジェントECU向けの次世代規格としてAUTOSAR APを策定している。AUTOSAR APは、マルチコアやメニーコアといった高性能CPUや、GPUやFPGAなどと組み合わせたヘテロジニアス構成への対応、POSIXベースであることなどが求められる。AUBIST Adaptive OS POSIXは、2017年10月に発表された最新リリース(17-10)をベースに開発された。
ベースになっているのはイーソルのメニーコア対応のリアルタイムOS「eMCOS」だ。分散型マイクロカーネルアーキテクチャにより、コア間通信を含むメッセージパッシング、コアローカルスケジューリング、複数のコアをクラスタ化するグループ化などが可能になっている。AUBIST Adaptive OS POSIXでは、これらのeMCOSの特徴を活用しつつ、リアルタイム性の確保など車載要件を満たすような最適化を施している。
興味深い特徴となっているのが、AUTOSAR APとともに、車載マイコンを用いる制御系システム向けの従来のAUTOSARであるAUTOSAR Classic Platform(CP)と混在したシステムの開発が容易なことだ。一般的には、AUTOSAR APとAUTOSAR CPを混在させるにはハイパーバイザーなどの仮想化技術を用いる必要がある。一方、オーバスが開発しているAUTOSAR CP向けのOSは、AUBIST Adaptive OS POSIXと同様にeMCOSと同じアーキテクチャを採用している。このため、eMCOSでコア間通信を実現するメッセージパッシングを用いれば、仮想化技術を使わなくてもAUTOSAR APとAUTOSAR CPを混在させられる。混在環境におけるリアルタイム性の確保も可能になるという。
展示では、AUTOSAR APの最新リリースの動作試験用レファレンスに指定されている、GPSシミュレーターを搭載するECUからの通信をイーサネット経由で受信するデモンストレーションを披露した。「レファレンスでは組み込みLinuxが用いられているが、AUBIST Adaptive OS POSIXでも問題なく動作している。今後は、AUTOSAR CPのBSWに相当するファウンデーションやサービスなどの開発も進めていきたい」(オーバスの説明員)という。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 国産AUTOSAR準拠BSWに第3の選択肢、デンソーが子会社「オーバス」を設立
デンソーとイーソル、NEC通信システムは、車載システムの基盤ソフトウェア(BSW:Basic Software)とその関連ツールの開発を行う合弁会社「株式会社オーバス」を設立することで合意した。国産のAUTOSAR準拠BSWに取り組む企業としては3社目となる。 - 次世代AUTOSARでセントラルゲートウェイ、異なる車載ネットワークをスムーズに中継
SCSKは「Embedded Technology 2017(ET2017)/IoT Technology 2017」において、異なる車載ネットワークの中継やセキュリティの実現に向けて、AUTOSARの次世代規格と位置付けられるAUTOSAR Adaptive Platformを用いたセントラルゲートウェイを紹介した。 - What is “AUTOSAR”/AUTOSARとは?
車載ソフトウェアの標準仕様「AUTOSAR」への移行・適用に当たって、実際に理解しておくべきポイントやヒントを整理して詳しく紹介する - AUTOSARの最新動向:2016年3月版
筆者へのAUTOSAR関連の問い合わせで、最近になって急激に増えているトピックが幾つかある。今回はそれらのトピックをまとめる形で、「AUTOSARの最新動向:2016年3月版」と題してお送りしよう。 - AUTOSARとは?/What is AUTOSAR?−2015年版−(後編)
「AUTOSARとは?」という問いにはさまざまな切り口での答えがある。今回は、前回に引き続き、「AUTOSARとは?/What is AUTOSAR?−2015年版−」の後編として、AUTOSARの標準化の対象である「(Software)Architecture」「Methodology」「Application Interface」の3項目の観点から説明する。 - AUTOSARとは?/What is AUTOSAR?−2015年版−(前編)
量産車にもすでに適用されている車載ソフトウェアの標準規格「AUTOSAR」。しかし現在も、AUTOSARとそれを取り巻く環境は刻々と変化している。本連載では、2011年に好評を博したAUTOSARの解説連載「AUTOSARとは?」の筆者が、2015年現在のAUTOSARの仕様や策定状況、関連する最新情報について説明する。