日系自動車メーカーはメガサプライヤーから「系列重視に変化」、ZFの立ち位置は:自動運転技術
日本の自動車メーカーと付き合うのは簡単ではなかったーー。2019年8月にZFジャパンの代表取締役社長に就任した多田直純氏は、複数の外資系サプライヤーで働いた経験を基にこう語る。自動車メーカー同士のアライアンスやサプライヤーの経営統合が相次ぐ中、メガサプライヤーの日本法人をどのように率いるか、多田氏が語った。
日本の自動車メーカーと付き合うのは簡単ではなかったーー。2019年8月にZFジャパンの代表取締役社長に就任した多田直純氏は、複数の外資系サプライヤーで働いた経験を基にこう語る。自動車メーカー同士のアライアンスやサプライヤーの経営統合が相次ぐ中、メガサプライヤーの日本法人をどのように率いるか、多田氏が語った。
メガサプライヤーから系列へ
多田氏のキャリアはボルグワーナーの日本法人でのエンジニアからスタート。ホンダ「S2000」のエンジンのタイミングドライブに携わった。続いてボッシュでは営業としてトランスミッション関連部品から始まり、直噴エンジンの部品、電動化技術なども担当した。
その後、テネコジャパンでは排気系やショックアブソーバーを手がけた後、寧徳時代新能源科技(CATL)の日本法人であるコンテンポラリーアンプレックステクノロジージャパンを立ち上げた。エンジニアや営業、経営の立場から、さまざまな自動車部品にかかわった。
グローバルに拠点を持つZFの中で、日本の役割は「悩ましいところ」(多田氏)だという。ボッシュは単独で日本に5300人、コンチネンタルも日本で約1600人を擁する。これに対し、ZFジャパンは「400人ちょっと。他のサプライヤーとどう戦うか、プライオリティを決めてやっていかなければならない。だいたいのサプライヤーが競合だと思っている」(同氏)。
ただ、ZFジャパンでは「プラットフォーム開発を担う能力はまだない。ソフトウェアやサービスの開発の重要度が増しており、ZFジャパンがコアコンピタンスを見つけ、ビジネスを探していくには追いつかないほど変化のスピードが早い。プラットフォーム開発は本社や強みを持っているところでやる形になる」(同氏)という評価だ。
日系サプライヤーは、トヨタ系サプライヤーが自動運転車のソフトウェアや電動システムの開発で連携を強めている他、ホンダ系サプライヤーと日立オートモティブシステムズの経営統合も発表された。こうした動きは「日系自動車メーカーが10年ほどメガサプライヤーと付き合って、“グローバルスタンダード”の部品を使うのが難しいと判断されたのではないか。日系自動車メーカーの品質や性能に対する要求に、標準として作った製品を合わせる難しさがあったと感じる。こうした流れで、系列サプライヤーとやっていこうという方針に変わったのではないか」(多田氏)。
事業環境が変化していく中で、メガサプライヤーが“グローバルスタンダード”として開発した製品は採用されにくくなると多田氏はみている。「日系自動車メーカーが系列サプライヤーとの関係を強めると、ほしいものを日本語で伝えて開発する。“グローバルスタンダード”を日本に持ってくるだけでなく、日本の自動車メーカーが欲しいものを、プラットフォーム開発の拠点に伝えることが必要だ」(多田氏)。
多田氏は自動運転やADAS(先進運転支援システム)について、「日本の法定速度と実際の走行速度の違いを踏まえ、法的に正当なものをどう開発するかが問われる」とコメントした。また、運転席のない無人運転車については、自動車メーカーや新しいプレーヤーは「シャシーの上のハコをどうするか、開発リソースを集めている。シャシーに必要な部品を持ち、機能として提供できることがZFの強みになる。無人運転車の中で本を読んだりスマートフォンを見たりして過ごす場合には、揺れを減らすシャシー技術で役に立てると考えている」(多田氏)と語った。
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