「電動化ナンバーワン」のメガサプライヤー誕生、日立AMSとホンダ系3社で:製造マネジメントニュース
日立製作所と日立オートモティブシステムズ、ホンダ、ケーヒン、ショーワ、日信工業は2019年10月30日、東京都内で会見を開き、サプライヤー4社を経営統合すると発表した。経営統合により、自動車の電動化や自動運転技術の分野で競争力の高いソリューションを提供すべく、リソースを確保する。
日立製作所と日立オートモティブシステムズ、ホンダ、ケーヒン、ショーワ、日信工業は2019年10月30日、東京都内で会見を開き、サプライヤー4社を経営統合すると発表した。経営統合により、自動車の電動化や自動運転技術の分野で競争力の高いソリューションを提供すべく、リソースを確保する。
写真左から日立製作所の小島啓二氏、日信工業 代表取締役社長の川口泰氏、日立オートモティブシステムズのブリス・コッホ氏、ケーヒン 代表取締役社長 相田圭一氏、ショーワ 代表取締役社長の杉山伸幸氏、本田技研工業 常務執行役員の貝原典也氏(クリックして拡大)
ホンダがケーヒンとショーワ、日信工業を完全子会社化した上で、日立オートモティブシステムズを最終的な存続会社として吸収合併する。クロージングは1年後を予定している。統合後の新会社の持ち分比率は、ホンダ以外の自動車メーカーへ広く拡販するため日立製作所が66.6%、ホンダが33.4%となる。新会社の仮称は日立オートモティブシステムズだが、「日立」の名前が入る可能性が高いという。新会社の取締役は総数を6人とし、日立製作所が代表取締役2人を含む4人、ホンダが2人を指名する。経営執行体制の詳細は6社で協議の上決める。
日立オートモティブシステムズ CEOのブリス・コッホ氏は「新会社はグローバルなメガサプライヤーとなる。電動パワートレイン、シャシーと自動運転やADASにおいて、規模の力と4社の人材を効率的に活用する」と自信を見せた。
企業名 | 日立オートモティブ システムズ |
ケーヒン | ショーワ | 日信工業 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|
売上高 | 971,007 | 349,220 | 286,692 | 189,693 | 1,796,612 |
営業利益 | 38,041 | 26,259 | 30,142 | 16,301 | 110,743 |
従業員(単位:人) | 25,176 | 23,063 | 12,615 | 10,325 | 71,179 |
営業利益率 | 3.9 | 7.5 | 10.5 | 8.6 | 6.2 |
金額の単位:百万円。売上高と営業利益は2019年3月期の数値 |
統合後は世界シェア3割、営業利益率2ケタに
会見に出席した日立製作所 執行役副社長の小島啓二氏は、自動車部品事業が日立にとって重要な位置付けであることを強調した。日立製作所は2019年5月に発表した2021年までの中期経営計画で、日立オートモティブシステムズを医療機器や家電と同じ「ライフ」セクターに置いた。これまではオートモーティブシステム事業として、電力や金融などと並ぶ独立した扱いだった。
「ライフセクターでは、プロダクトの強化と、サイバーフィジカルワールドのソリューションをどうつくるかという両輪で取り組むことを重視している。ソリューションをつくるにはフィジカル側となるプロダクトの強化が今後も重要だ。自動車部品はシステム化が進んでおり、自動車メーカーがサービスカンパニーになっていく中では自動車部品はシステムビジネス、サービスビジネスに変わっていく。社会や街の中で移動は必ず発生する。自動車も移動の1つなので、日立にとって自動車部品事業は重要なソリューションだ」と小島氏は説明した。
ライフセクターでは収益性改善が課題となっており、日立オートモティブシステムズでは2018年に3.9%だった営業利益率を2021年に10%まで引き上げることを目指す。経営統合後もこの目標は変わらず、達成に向けて「コア製品」の世界シェアを3割以上に高めようとしている。ケーヒンやショーワ、日信工業との経営統合は、この中期経営計画の中で重要なパートだとしている。「コスト面でどれだけシナジーを出せるかは今後具体的に計画するが、自動車業界ではソフトウェアのコストを回収するには相当のボリュームが必要になる。量をスケールアップしないと利益が出ないので、営業利益率2ケタに向けて極めて重要なポイントになる」(小島氏)
日立オートモティブシステムズ、ケーヒン、ショーワ、日信工業の間では、それぞれ重複する製品がある。この整理についてコッホ氏は「4社を統合することで、よりよいテクノロジーを提供できるようになり、力を入れる製品を分担して開発効率を高めることができる。また、まとまることでよりよく人材を育て、必要な分野で集中して活用することも可能になる」と語った。
経営統合後の製品のシェアは「ケーヒンと日立がすでに強いポジションにあるので、電動化ではナンバーワンになる。日立と日信工業、ショーワの製品が集まることで、ブレーキやサスペンション、プロペラシャフトも高いシェアになるだろう」(コッホ氏)と見込む。また、ケーヒンとショーワ、日信工業の二輪車ビジネスの実績も活用していく。
ルマーダでコネクテッド化にも注力
日立製作所は、コネクテッドカーに関連した技術や製品を持っていたクラリオンをフォルシア(Faurecia)に売却したばかりだが、日立製作所のIoTプラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」を使った自動車のコネクテッド化にも期待を寄せる。
小島氏は「デジタルとデータは自動車事業に欠かせない。二輪車、四輪車ともにいろいろなデータを発生させる重要なソースになると考えている。データに光を当てて、新しい社会を作るのがルマーダだ。二輪車や四輪車はルマーダにフィットしている。データ活用の足がかりになるのは無線ネットワークによるアップデート(OTA:Over-The-Air)だと考えている。OTAの周りにはメンテナンスや安全運転、ヘルスケアなどさまざまなサービスがついてくる。まずはそこから入りたい」とコメントした。
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