日立オートモティブは“全方位”を諦めた、選択と集中でクラリオンを手放す:製造マネジメントニュース
日立製作所は2018年10月26日、東京都内で決算会見を開き、フランスの大手サプライヤーであるフォルシア(Faurecia)にクラリオンを899億円で売却すると正式に発表した。日立グループの自動車ビジネスにおいて、注力事業の選択と集中を進める一環でクラリオンの売却を決めた。
日立製作所は2018年10月26日、東京都内で決算会見を開き、フランスの大手サプライヤーであるフォルシア(Faurecia)にクラリオンを899億円で売却すると正式に発表した。日立グループの自動車ビジネスにおいて、注力事業の選択と集中を進める一環でクラリオンの売却を決めた。
クラリオンは日立製作所の連結子会社から外れる。日立製作所はフォルシア子会社が行う公開買い付けに、保有するクラリオンの普通株式を全て応募する。公開買い付けは2019年1月下旬に開始する。売却益は、日立製作所の自動車部門である日立オートモティブシステムズの投資に活用する。日立オートモティブシステムズは、注力分野と位置付ける車両の制御技術にリソースを集中させる。
2019年3月期(2018年度)中に売却が完了した場合、2019年3月期の個別決算における特別利益で780億円を計上する。同じく連結決算において事業再編等利益で約650億円を計上する。
売り上げの1割「しか」ないという評価
日立オートモティブシステムズでは、収益改善のための抜本的な改革として、2018年4月に就任した新社長であるブリス・コッホ氏が事業ポートフォリオやオペレーション、コストなど全面的な見直しを進めている。これまで同社は、自動車に求められる安全、環境、情報の全ての分野でシステムや製品を持つことを武器にしてきた。直近では、自動運転と電動化を注力分野に掲げた。しかし、「全方位で自前でやることは難しい」(日立製作所 執行役専務 CFOの西山光秋氏)という状況に変わっていく中で、事業の選択と集中を進めることに決めた。
自動運転と電動化に全方位で取り組むのが難しい中で、「日立の得意分野である車両の制御にリソースを割くべきだと判断した。先進運転支援システム(ADAS)においても制御に注力する」(西山氏)。クラリオンと日立オートモティブシステムズはADASで協力してきたが、「ADASはクラリオンの売り上げの1割しかない。収益の大半を占めるカーナビゲーションシステムなどは、マーケットが旧来とは急速に変わっており、コモディティ化している部分が大きい。フォルシアはクルマの内装のスマート化、システム化にかじを切っている。クラリオンの価値を見出してくれるフォルシアと一緒になる方が、価値が高まるのではないか」(西山氏)。
一方、フォルシアはクラリオンに高い期待を寄せる。買収によって、2020年に全社売上高で210億ユーロ(約2兆6700億円)以上を見込む。2017年のフォルシアの売上高は約169億ユーロ(約2兆1500億円)で、1.2倍以上の成長となる。「クラリオンは、車載インフォテインメントシステムやフルデジタルオーディオ、HMI(ヒューマンマシンインタフェース)、コネクティビティ、ADAS、クラウドベースのサービスを持つ。買収は、フォルシアが進めるコックピットシステムの統合を大幅に強化する」(フォルシア)としている。また、買収により、クラリオンは欧州で、フォルシアは日本で顧客基盤の拡大を進めることができる。
フォルシアはコックピット事業を統括する新会社として、「フォルシア クラリオン エレクトロニクスシステム」を設立する計画だ。本社は日本に置く。新会社では9200人の従業員、1650人以上のソフトウェアエンジニアを雇用し、2022年に売上高20億ユーロ(約2543億円)以上を目標とする。クラリオンの2019年3月期通期の売上高は1650億円となる見通し。新会社の収益目標はクラリオンの売り上げの1.5倍以上となる。
日立オートモティブシステムズとクラリオンが共同で受注したプロジェクトは、今後も両社で継続して取り組む。また、西山氏は「クラリオンとは子会社化する以前から協力してきた。資本関係がなくなっても提携していけると考えている」と述べた。
日立オートモティブは100億円の減益見通し
2018年4〜9月期の日立オートモティブシステムズの業績は振るわなかった。売上高は前年同期比2%減の4790億円、調整後営業利益は同2.9%減、144億円減の98億円となった。西山氏も「厳しい状況」と評価する。原因は、北米の納入先において、日立製品を搭載した車種のうち、SUVでないタイプの販売が減少したことだ。北米の生産拠点で収益性改善が順調に進まなかったことも減益要因となった。対象の生産拠点はエンジン回りのコンベンショナルな製品を扱っており、歩留まりの低下や受注減少、稼働率の低下が課題となっていた。
2019年3月期通期の業績見通しは、調整後営業利益を前回の予想から下方修正した。見通し比で100億円引き下げて500億円を見込む。前期の調整後営業利益と比較すると0.1%増となる。売上高は前期比1%減の9900億円で据え置いた。北米の生産拠点における生産性向上は2018年度内に完了する予定だが、前回の業績予想の時点と比べて計画より遅れていることを反映した。
西山氏は日立製作所における自動車事業の位置付けについて「モビリティというソリューションの中では重要なビジネスである。(日立としてさまざまな分野を手掛ける中で)利益を出しにくい構造の事業もある。まずはビジネスユニットごとの収益性向上が必要だが、IoTプラットフォームの『Lumada(ルマーダ)』につながる機器であれば、ルマーダを使ったソリューション全体として10%の営業利益が出せればいいと考えている」と述べた。
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