日立オートモティブの研究開発費が1000億円突破、自動運転システムの開発を強化へ:自動運転技術
日立オートモティブシステムズは、2018年度に向けた事業戦略を発表した。2018年度は売上高を2015年度比10%増の1兆1000億円に引き上げることを目指す。市場成長率の高い電動化製品に注力するとともに、2020年に3兆円の市場規模が見込まれる自動運転システム市場においてグループで連携したソリューションを展開していく。
日立オートモティブシステムズは2016年6月1日、東京都内で日立製作所が開催した株主/投資家向け説明会の中で、2018年度に向けた事業戦略を発表した。2018年度は売上高を2015年度比10%増の1兆1000億円に、調整後営業利益率は同1ポイント増の7.0%に引き上げることを目指す。市場成長率の高い電動化製品に注力するとともに、2020年に3兆円の市場規模が見込まれる自動運転システム市場において日立グループが連携したソリューションを展開していく。
2018年度の研究開発費は2016年比で60%増
2018年度の研究開発費は、同年度の売上高目標の10%となる1100億円を投じる計画だ。2015年度の699億円に対し6割増に増える。研究開発費が1000億円を超えるのは、同社として初だという。研究開発費を振り向けるのは、成長をけん引する電動化製品や、先進運転支援システム(ADAS)、自動運転システムだ。
同社は、情報と車両制御を融合する自動運転システムの市場は2020年に3兆円以上に拡大すると見込んでおり、シェア10%=3000億円以上の事業に拡大することを目指す。
2015年度の研究開発費は、計画時点での800億円の見込みに対し699億円にとどまった。自動運転システムなど日立グループで連携して取り組んでいる分野で開発シナジーを創出できたことにより、投資額の増加を抑えられた。2016年度は売上高目標1兆円の7.6%となる760億円を投じる。
自動運転システムの開発体制も強化している。2016年4月には、自動運転やコネクテッドカーの新製品開発に注力する一環でシリコンバレーに事務所を新設。また、日立オートモティブシステムズとクラリオンは、車両の制御技術と情報通信技術を融合するための新しい事業部をそれぞれ設け、日立グループとしての連携を強化していく。
さらに、ソフトウェア開発体制を厚くするため、中国でソフトウェア開発の人員を200人増員した他、日立グループのソフトウェア会社には自動車部門を設けた。国内外の大学とのオープンイノベーションも活用していく。
研究開発費が増加するのに対し、拠点投資の拡大は一段落とする。2014〜2016年度のグローバル投資額は、2015年時点の見通しから400億円減の2400億円を見込む。2017〜2019年度は2300億円を計画している。
「われわれは、メキシコやインドといった成長市場も含めて世界62拠点までグローバルフットプリントを拡充してきた。次に進出すべき地域としてはブラジルやロシアが考えられるが、量ではなく質を求める段階に入ったと考えている。62拠点全てを安定して運営することに重点を置き、刈り取りフェーズに移行する」(日立オートモティブシステムズ 社長執行役員の関秀明氏)。
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