検索
インタビュー

“オール日立”の自動運転技術はレベル2の最終形態を目指す自動運転技術 日立オートモティブ インタビュー(1/3 ページ)

日立オートモティブシステムズは2016年2月、同社として初となる自動運転車の公道試験を茨城県で実施した。その自動運転システムは、“オール日立”で開発したものだ。日立グループで取り組む自動運転システムの開発について、日立オートモティブシステムズ 技術開発本部 先行開発室 スマートADAS技術開発部 部長の内山裕樹氏に聞いた。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 国内外で、自動車メーカーやメガサプライヤによる自動運転技術の公道実証実験が相次いでいる。日立オートモティブシステムズもその1社で、2016年2月には同社として初となる公道試験を茨城県で実施した。自動運転システムは、日立製作所 情報・通信システム社やクラリオンと連携し“オール日立”で開発したものだ。日立グループで取り組む自動運転システムの開発について、日立オートモティブシステムズ 技術開発本部 先行開発室 スマートADAS技術開発部 部長の内山裕樹氏に聞いた。

日立の「自動運転プロジェクト」

日立オートモティブシステムズの内山裕樹氏
日立オートモティブシステムズの内山裕樹氏

MONOist 2016年2月に自動車専用道路で自動運転システムの公道試験を実施した。どのような車両を走らせたのか。

内山氏 公道試験に使ったのは自動化レベル2の自動運転車だ。ドライバーが常に周囲を監視する状態で、車線の維持や先行車両への追従、車線変更を自動で行った。車両に設置した「オートモード」のスイッチを押すと自動運転に切り替わる。ドライバーが方向指示器を操作するとセンサーが周囲を監視しながら自動で車線変更する。

 公道試験を行ったのは全長2.9kmの常陸那珂有料道路だ。交通量が多くなく、自動運転システムを試しやすい環境だったが、テストコースよりもハードルは高い。テストコースは車線の幅が広く何の障害物もないが、公道は車線が狭くなる。また、ガードレールや壁などもあり、レーダーの反射など影響を加味してシステムを調整して走行しなければならない。大きなトラブルもなく、さまざまな天候や時間帯の走行データを集めることができた。

 今回の公道試験を含む2015年度までの取り組みは、われわれにとってステップ2に当たる。ステップ3となる2016年度は、適切な車間距離をとった合流や自動追従を作動させたままでの追い越しがテーマになる。

MONOist これまでどのようなステップで自動運転技術を開発してきたのか。

内山氏 ステップ1は、自動駐車や、ステレオカメラを使った自動追従や自動ブレーキを1台の車両に搭載することだった。ステップ1では車両開発に用いる車載汎用コンピュータによる情報処理だったため、ステップ2では組み込みのECUで自動運転システムを動作させることを目標とした。

 われわれは自動運転システムのアプリケーションを製品化する企業ではないので、車両開発用の汎用コンピュータで動作する技術を開発しても意味がない。現状のセンシング技術と実車に搭載できる組み込みのECUで、どこまでの自動運転システムがつくれるか。ボトムアップ的に取り組んでいる。自動運転システムの製品化に貢献するECUをより速やかに自動車メーカーに提供するためだ。

 例えば、自動車メーカーは、ライダー(Lidar)のように高精度だが量産車への搭載が難しいセンサーを使用して自動運転システムを開発している。われわれの方はボトムアップ的に取り組むことで、理想像に向けて足りない部分を埋めていく対話ができると考えている。

組み込みで動作する自動運転車に

MONOist 今回の公道試験の自動運転車の構成はどうなっていたのか。

内山氏 自動運転用ECU、セントラルゲートウェイ、ミリ波レーダー、カメラ、ステレオカメラ、車車間/路車間通信、高精度地図を扱うマップポジションユニットを全て組み込みで動かした。車内にコンピュータを何台も積み上げるのではなく、荷室の底面に敷き詰めて収まるイメージだ。この点は自動車メーカーにも評価していただいた。自動化レベルが高くなるほどシステムは複雑になるが、組み込みECUにすれば安定度を高められる。

 車載ネットワークはCANと車載イーサネットを使用した。セントラルゲートウェイがCANを複層化したり、CANと車載イーサネットを仲立ちしたりさせる。車載イーサネットは、ステレオカメラや車車間/路車間通信など高い伝送速度が必要な範囲に使用した。

 われわれが取り組むステップ3以降の自動運転システムでは、高速のCANとして知られるCAN FD(CAN with Flexible Data Rate)でも伝送速度が不足する。センサーが増えると情報量が増えるためだ。ステップ2で使用したセントラルゲートウェイにはCAN FDを検討できる回路は持っているが、今後情報量が増加していく中で全てのデータを生で扱う車載ネットワークを構築するのは難しい。高速な車載ネットワークは日立製作所内のネットワーク系の技術者の力を借りながら開発を進めていく。

MONOist 情報量の増加によってセントラルゲートウェイの重要性が増していく。

内山氏 セントラルゲートウェイにはセキュリティも不可欠だ。自動運転車はIT機器と同様に不正アクセス対策が求められる。IT機器は常にアップデートしなければハッキングに対抗できないいたちごっこの状態で、クルマも同様の方向に進むのではないか。無線ネットワークによるアップデート(OTA:Over-The-Air)でECUをアップデートしていくことに対応したセキュリティを搭載しなければならない。CANゲートウェイをアップグレードする形になるだろう。日立製作所は、金融や産業系のインフラで実績のあるセキュリティ技術を持っている。これを上手く自動車に持ってこようとしているところだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る