富士通テンがデンソーの傘下に、ADASと自動運転技術の開発力を強化へ:製造マネジメントニュース
デンソー、富士通、トヨタ自動車は、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転技術、電子基盤技術の開発力を強化するため、3社が出資する富士通テンの資本構成の変更を検討することで基本合意した。富士通テンの出資比率は、デンソー51%、トヨタ自動車35%、富士通14%となり、富士通テンの親会社は富士通からデンソーに変わる見込みだ。
デンソー、富士通、トヨタ自動車の3社は2016年9月9日、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転技術、電子基盤技術の開発力を強化するため、3社が出資する富士通テンの資本構成の変更を検討することで基本合意したと発表した。現在の富士通テンの出資比率は、富士通55%、トヨタ自動車35%、デンソー10%だが、基本合意ではデンソーが51%に増えて、トヨタ自動車は35%を維持し、富士通が14%に減ることになり、富士通テンの親会社は富士通からデンソーに変わる。出資元の3社は今後具体的な検討を進め、2017年3月末をめどに最終的な契約締結を目指す。
基本合意では、富士通テンの資本構成の変更に加えて事業方針も定めている。この事業方針は、「富士通テンは、総合自動車部品メーカーであるデンソーグループの一員として、両社の強みを活かすとともに、引き続き富士通グループとの間でICT分野における連携を推進する。これにより、高度運転支援・自動運転技術および電子基盤技術の開発を強化し、『つながる車載情報機器・サービスを提供・提案するシステムメーカー』を目指す」となっている。
「テン」は最高・至上を意味する「天」
富士通テンは、1920年創立の川西機械製作所に始まり、1949年に設立された神戸工業を前身としている。1968年に富士通と合併した後、1972年に富士通のラジオ部門が分離/独立して富士通テンとなり、1973年にトヨタ自動車とデンソーが資本参加した。以降、カーオーディオやカーマルチメディアをはじめとしたカーエレクトロニクスメーカーとしてさまざまな製品、サービスを提供している。
富士通テンの「テン」は、最高・至上を意味する「天」のことで、前身の川西機械製作所や神戸工業以来、「天」「テン」「TEN」を商標として使用してきた。
近年は、「エクリプス」ブランドで知られるカーナビゲーションシステムに加えて、運転支援システムに用いるミリ波レーダーや車載カメラなどのセンサー、車載システムを制御するECU(電子制御ユニット)などが中核事業となっている。これら車両側の技術と、富士通グループのICT技術を連携させた「Vehicle-ICT事業」を強化していた。
デンソーは、富士通テンを傘下におさめることで、両社の持つ車載ECUやミリ波レーダー、ADAS・自動運転技術および電子基盤技術の開発などにおける、一層の協力関係の強化を図りたい考え。
富士通は出資比率を14%に減らすものの、「つながるクルマ」や自動運転など次世代の自動車においてICTの重要性がますます高まっていると認識しており、デンソーおよび富士通テンとの連携をより一層強める方針。自動車ビジネスやモビリティIoTビジネスのさらなる強化を図っていく。
トヨタ自動車は、引き続き富士通テンの主要株主として、同社の企業価値の向上や製品の競争力強化により、トヨタ自動車の「もっといいクルマづくり」が一層進むことを期待するとしている。
富士通テンの新社名は?
なお、親会社が富士通からデンソーに変わるため、2017年4月以降、富士通テンは社名を変更する可能性が高い。またこれまでに富士通テンは、Valeo(ヴァレオ)やアルパインとの共同開発を発表しているが、デンソーの傘下に入ることで見直される可能性もある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 富士通テンがミリ波レーダーの開発を加速、2018年に第3世代へ進化
富士通テンは、先進運転支援システム(ADAS)に用いられる77GHz帯ミリ波レーダーモジュールの有力企業だ。2003年に国内で初めて自動ブレーキを搭載した「インスパイア」に採用されるなど、現在までに累計100万個を出荷している。自動運転技術の開発が加速する中、同社のミリ波レーダーモジュールはどのような進化を遂げようとしているのか。 - デンソーがクルマに載せられるAIの開発に注力、「かなり早めに出せる」
デンソーが東京都内で報道陣向けにAI(人工知能)取材会を開催。自動運転やADAS(高度運転支援システム)向けでAIを実用化するために開発しているさまざまな技術を、デモンストレーションで披露した。 - 日本の自動運転車開発の課題は「自動車業界とIT業界の連携不足」
「第3回 自動車機能安全カンファレンス」の基調講演に富士通テン会長の重松崇氏が登壇。重松氏は、トヨタ自動車でカーエレクトロニクスやIT担当の常務役員を務めた後、富士通テンの社長に就任したことで知られる。同氏はその経験を基に「自動運転技術の開発を加速する上で、日本は自動車とITの連携が足りない」と課題を指摘した。 - 富士通テンとアルパインが車載プラットフォームを共同開発、2016年にも製品化
富士通テンとアルパインが車載プラットフォームの共同開発することで基本合意した。同プラットフォームを用いた製品を2016〜2017年に市場投入することを目標としている。 - 富士通テンのミリ波レーダーとValeoの車載カメラを融合、高精度センサーを開発
富士通テンとフランスの電装部品メーカーValeoは、富士通テンが豊富な採用実績を有するミリ波レーダーと、Valeoが開発中の車載カメラを組み合わせて、先行車両や歩行者、自転車などの障害物を検知する高精度のセンシング技術の開発に取り組む。