マイクを使って非接触の設備異常監視を実現、“音のプロ集団”が提案:FAニュース(2/2 ページ)
日立パワーソリューションズは、工場や発電所で発生する騒音を常時測定することで異常の有無を監視できる「リアルタイム騒音監視システム」を発表。2022年度には、ソリューションを拡充した上で年間2億円の受注高を計画している。
設備の停止や改造は不要
主な用途になるのが、工場や発電機で用いられているモーターやポンプなどアクチュエータ系設備の異常監視だ。設備の異常監視では、加速度センサーを組み付けて振動を測定する手法も提案されている。しかし「設備を停止したり、改造したりする必要がある。できれば停止も改造もしたくないというニーズは強く、そこで音を使った非接触センシングを行うことにした」(日立パワーソリューションズの担当者)という。
ただし、音による非接触センシングでは、マイクの近くにいる作業者の話し声や、自動車の走行音などの外乱が大きな課題となる。今回のリアルタイム騒音監視システムでは、正常時稼働音の周波数情報を事前登録しておき、測定しているデータが正常時稼働音と比べて異なる度合いを異常尺度として機械学習によって計算し、一定のしきい値を超過した場合に異常と判定するようにしている。そして、この異常尺度の推移を監視して、継続的に異常尺度が増加している場合にのみ「設備に異常発生の可能性あり」と診断するようにしている。「突発的な音の影響で異常尺度が増加する場合もあるが、その場合は継続的に異常尺度が増加したままにはならない。設備由来の場合は、異常音が連続的に発生し、異常尺度の増加が継続する」(同担当者)。
また、異常尺度を利用すれば、対象騒音の評価に障害となる外乱の発生時間帯を識別させて、突発的な周囲騒音(評価対象外音)がある中でも正常稼働音の発生状況を効果的に評価することができる。
設備の異常監視と異なる用途としては、工場や発電所などの周辺への環境問題になる騒音の測定だ。敷地境界にシステムを設置することで騒音を常時監視できることに加え、機械学習に基づく外乱の自動識別と分離が効果を発揮する。
日立パワーソリューションズは、1977年に社内組織として「防音エンジニアリングセンタ」を設立し、工場や発電所を対象とした騒音課題に対する「防音エンジニアリング」を提供してきた。2019年までに800件以上の業務を実施しており、これらのうち6〜7割が発電所、残りが工場向けになっている。「この音のプロ集団としての知見とノウハウがあってこそ、異常診断に必要な音声データの前処理や機械学習エンジンの開発などが可能になった。先行顧客としてプロセス系の製造業企業でのPoC(概念実証)を進めており、今後も製造業を中心に提案を進めていきたい」(同担当者)としている。
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