知能化、省メンテナンス性が加速する包装機器、“紙化”の流れも加速へ:JAPAN PACK 2019(3/3 ページ)
2019年10月29日〜11月1日に千葉県の幕張メッセで開催された包装プロセスの総合展示会「JAPAN PACK 2019(日本包装産業展)」。「きっとみつかる、あなたの包程式」を開催テーマとし、450社以上が包装機器や新たな包装プロセスなどを紹介した。包装機器業界における新たな傾向について、開催期間中に発表された「JAPAN PACK AWARDS 2019」の受賞製品を中心に紹介する。
部品点数減で清掃や保全性を高めたマスダックマシナリーの「全自動どら焼機」
優秀賞を受賞したマスダックマシナリーの「全自動どら焼機」は、部品点数を減らし、清掃や交換がしやすく、メンテナンス性を高めた点が特徴となる。生地充てんから中身充てん、焼き印、耳締めまでを全自動で行える。
従来機ではボルトなど機械部がどら焼き上部に露出している部分があり、清掃時や交換時などの作業が行いにくいなどの課題があったが、機械部を基本的には筐体内に収め、食品に触れる部分の部品点数を大幅に減らしたことで、メンテナンス性を高めることができる他、機械の脱落による異物混入リスクを下げることができたという。例えば「あん充てん機ではどら焼きの搬送部に露出しているボルトの数が、従来は50〜60本あったが、新型機では1本まで減らすことができた」(マスダックマシナリー)としている。
泡立つ液体の充てんを高速に実現する東洋自動機の自動充てん包装機「TT-12CR」
優秀賞を受賞した東洋自動機の自動充てん包装機「TT-12CR」は、独自のモーション制御技術を駆使した液充てん追従システム「DDS(Direct Drive System)3」を搭載し、搬送しながら液充てんが行えるようにしたことが特徴だ。
充てん時間は基本的には搬送などが停止するため生産性を上げるためには充てん時間をできる限り短くする必要がある。しかし、短い時間に多くの液を充てんしようとすると速い流速が必要になるが、流速を上げ過ぎると泡立ち、正しい量の充てんが行えなくなる。この問題を解決するためにDDS3を導入。液充てん機を搬送のスピードに追従させ、搬送している間も充てんが行えるようにしたという。
環境対応強化と省メンテナンス性、インテリジェント機能に注目
ここまで「JAPAN PACK AWARDS 2019」の大賞や優秀賞の製品を見てきたが、傾向として強く出ているのが、省メンテナンス性の強化である。包装機器は食品や飲料、日用品などで使用される場合が多いが、これらの機器は製品ロットなどに合わせて清掃作業が必須となるケースが多く、メンテナンスが大きな負担となっている。これらの軽減が大きなポイントとなっており、今後もさらに強化が進む。特に透明筐体の採用や、ネジや機械部の削減や収納などはさらに進むことが予測される。
加えて、機械の不具合をなくし、止まらない機械を目指すインテリジェント化(知能化)も進んできた。センサーデータなどを活用した予防保全機能の採用は多くの機械で既に行われている。ただ、現状では、機械単体での知能化が中心で、今後は複数機械や製造ラインなどでのデータの活用や知能化、AI活用などへと広がりを見せるだろう。
また、世界の大きな流れとして、環境問題への対応要求は今後さらに強まってくるのは自明である。その中で「プラスチックから別素材へ」という動きは広がる。紙やその他素材でもプラスチック同等の包装品質が確保できるような技術開発が求められる。
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