菓子缶の小ロット販売で“黒子”脱却、「お菓子のミカタ」が見据えるB2B2C戦略:イノベーションで戦う中小製造業の舞台裏(12)(1/4 ページ)
街のお菓子屋さん向けに菓子用の缶パッケージを小ロット販売しているWebサイト「お菓子のミカタ」。同サイトを運営しているのは創業70年を迎える大阪製罐だ。同社の3代目社長である清水雄一郎氏は、街のお菓子屋さんをサポートする「お菓子のミカタ」の先に、B2B2Cのビジネスモデルを見据えている。
創業70年を迎える大阪製罐株式会社(以下、大阪製罐)の主力製品は、菓子用の製缶だ。12月初旬、社長の清水雄一郎氏のところに街の洋菓子屋さんから問い合わせが入った。
「昨日から、オンラインショップに注文が殺到しています。缶入りお菓子にオーダーが集中しているのですが、何か心当たりはありませんか?」清水氏は、すぐにピンときたという。
老舗の菓子缶メーカーが、小ロット缶で街の洋菓子屋さんをサポートを始めたきっかけとその思いについて伺った。
“お菓子のジャケ買い”が起きる缶パッケージを街の洋菓子店に広げた
大阪製罐が運営するWebサイト「お菓子のミカタ」では、どこの街にもある個店洋菓子屋向けに既製缶を小ロットで販売している。
9月某日、同サイトへの問い合わせから70件ものサンプル申し込みがあった。「いつもは1日1件のペースなのに、何があったんだろう?」と、担当社員を囲んで、社内がざわついたそうだ。
サイト構築を依頼したWebコンサルタントに尋ねると「SNSで話題になっているのかもしれませんよ」と言われた。早速、検索してみたところTwitterで「お菓子のミカタ」が話題になっているのを発見したそうだ。
「この缶、かわいい!」
「星座缶のシリーズが最高!」
「サンプルがもらえるらしいよ?」
Twitterの元発言は、1万回以上リツイートされていた。
「『かわいい!』と言っていただけてうれしかったのですが、サンプルは新規取引を検討してくださる事業者向けのサービスなので……」と、同社の3代目社長である清水雄一郎氏はいう。
申し込みに対しては、1件1件電話で事情を説明し了承いただいたそうだ。
記事の冒頭で挙げた、洋菓子屋のオーナーからオーダーが殺到した理由を尋ねられたときに、「今回も、きっと……」と考えてWeb検索した。すると、やはりTwitterの発言が見つかった。
2016年春にリリースした宝石箱をイメージした缶パッケージが「缶がかわいくて、お菓子もおいしい!」と紹介されていた。1700件以上リツイートされ、「どこで売っているの?」という質問に店名と他のオススメ缶入りお菓子も紹介されていた。
男性には不可解なようだが、女性にとって「缶がかわいい」は購入動機になる。例えば、友人宅を訪問する際に洋菓子店で手土産を購入する場合、初めての店ではどのお菓子が一番おいしいのか見た目では分からない。
判断に迷うとき、オシャレな缶入りアソートがあれば迷わずそれにする人は多いだろう。「この缶、かわいい! あとで何かに使えるし」という付加価値がつくからだ。
レコードや書籍をジャケ買いする人がいるように、女性はお菓子を“ジャケ買い”する。テーマパークの土産物屋をみれば、それは明らかだ。
お菓子のミカタは、これまで百貨店で扱われる有名菓子店やテーマパーク、大手製菓メーカーでしかあり得なかった“お菓子のジャケ買い”という女性の購入動機を個人経営の洋菓子店にも広げたのだ。
清水氏に、個店向けに既製缶の小ロット販売をはじめた経緯と思いを伺った。
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