ホンダのモノづくりをオーディオにも、開発者にこだわりを聞く:イノベーションのレシピ(3/3 ページ)
ホンダがオーディオ機器用蓄電機を開発した。なぜ、ホンダが畑違いのオーディオ市場に足を踏み入れたのか。また、オーディオ製品の開発にあたり、ホンダの強みが生きた点や苦労した点はどこにあったのか。開発を担当した本田技術研究所の進正則氏などに聞いた。
200台限定の生産数でも手が届きやすい製品価格に
MONOist 開発で苦労した点はどこでしょうか。
進氏 やはり音の評価が難しいことにつきる。電源に関する品質の判断はわれわれもできるが、それが音質にどうつながるかは社内でも未知の領域だった。今までに手掛けたことのない製品だったので、専門家とのコネクション作りなどから手探りで開発を進めた。
倉田氏 ホンダは量産品を手掛けているメーカーだが、今回の販売数は200台限定だ。サンプル品を作るような生産数の中でちゃんと手が届きやすい製品価格にまとめてもらったのは、開発チームがモノづくりの中で工夫をしたところだろう。
進氏 限定200台という条件があったので、部品の製造などでホンダが従来行うモノづくりとは少し違うプロセスを踏んだ。オーディオという今まで経験したことのない領域で開発してきたが、ユーザーから「音が良くなった」とのフィードバックを得ることができれば、われわれの電源に対するアプローチの正しさが実証されるとの思いで開発を進めてきた。
MONOist オーディオ市場への製品展開について、今後の方針はどのようにお考えですか。
倉田氏 ホンダは主にクルマやバイクを作っている会社というイメージがあると思うが、飛行機を作っていたりロボットを作っていたりする。われわれは常に社会に対して役に立つ製品を作ってきた。
われわれは今回オーディオ機器を作ったつもりはない。発電機を作る会社として持つ技術を活用し、オーディオ愛好家のニーズに応えるための電源として、この製品を開発した。今後、この製品を限定販売からビジネスとして展開できるかは、購入者の反響や販売台数以上の需要があるかどうかを見極める必要もある。
MONOist LiB-AID E500 for Musicの受注状況を教えてください。
倉田氏 非常に専門性が高い商品ながら、2019年10月17日昼に製品発表を行ってから半日で50台を超えるオーダーをいただいた。ユーザーは実際の製品を見ることができていない状況にも関わらず、大きな注目を集めていることにわれわれも驚いているところだ。
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