“匂い?臭い?”問題をセンサーで解決、匂いのデータ化でエコシステムを構築:CEATEC 2019
第一精工と凸版印刷は「CEATEC 2019」(2019年10月15〜18日、千葉県・幕張メッセ)において「匂い」を数値化できる「匂いセンサー」を出展。異臭検知や腐敗検知、ガス漏れ対策などさまざまな用途展開へと期待を集めた。
第一精工と凸版印刷は「CEATEC 2019」(2019年10月15〜18日、千葉県・幕張メッセ)において「匂い」を数値化できる「匂いセンサー」を出展。異臭検知や腐敗検知、ガス漏れ対策などさまざまな用途展開へと期待を集めた。
MEMS検知素子で匂いをデータ化
両社が出展した「匂いセンサー」は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電薄膜に異なる感応膜を塗布した複数の検知素子をセンサーチップ上に搭載。電圧をかけて共振している感応膜に匂い分子を付着させ、共振周波数の変化から数値データを取得する。このパターンを照合することで匂いを識別するという仕組みだ。つまり、特定の匂い分子を引き寄せて吸着するという仕組みと、吸着した分子の電圧周波数から分子を特定するという2つの2位組で構成されている。そのため、匂い分子を引き寄せる感応膜の種類を増やすことで、対応可能な匂いの数を増やすことができるというのがポイントである。
さらに圧電薄膜はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)により小型化、低コスト化を実現し、実用化に近づけたという。同技術はCEATEC AWARD 2019のデバイス&テクノロジー部門において、準グランプリを獲得している。
現在サンプル出荷している「nose@MEMS」では、感応膜と圧電薄膜が一体となった検査素子が10穴のモノを2つ備えた20種類の匂いをかぎ分けられるタイプを展開。「検査素子は20個が1つの組み合わせとなり、入れ替えが可能。現在は180種類までは感応膜を用意しており、180種類の匂いが検知できる」(説明員)とする。ただ、匂いの種類によって感応レベルなども異なり、分析の精度が変わってくるという。また、人間の鼻は約400種類の匂い分子をかぎ分けられるとされておりそのレベルに到達するには時間がかかるとしている。「人間の鼻をそのまま代替するというよりは、一定の匂いが発生した時に検知するというような使い方を想定している」(説明員)。
用途については「既に多くの問い合わせを受けている。食品の腐敗や異臭の検査やデータ化、プラントなどの異臭検知、医療、自動車や環境、ヘルスケアなど、さまざまな活用方法が検討されている」(凸版印刷説明員)とする。
匂いのエコシステムを構築へ
第一精工と凸版印刷ではこの匂いセンサーを使い「匂いのデータ化」を実現する「エコシステム」の構築に取り組む。センシングや分析、用途別アプリ、データベースなどを一貫して提供する他、将来的には全てのサービスをクラウド上で展開する計画だとしている。「nose@MEMS」は2020年2月には出荷開始としており、センサーの本体料金は9万8000円としている。
加えて、「nose@MEMS」の簡易版の投入も目指す。これは検知素子だけを独立させたもので、情報処理の部分はスマートフォン端末を活用するというもの。スマホの接続端子に接続するだけで簡単に匂いのデータ化ができるという。同製品は2020年春の製品化を目指すとしている。
「匂いは従来は数値化が難しかった領域だが、数値化できることで解決できることは非常に多い。新たな用途や領域を開拓していきたい」(説明員)としている。
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