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統計の食わず嫌いを直そう(その10)、ワインを飲まずに品質を予測する方法山浦恒央の“くみこみ”な話(82)(1/3 ページ)

統計アレルギーの解消には、身近な分野で考えてみることも大切です。今回は「ワインを飲まずに、ワインの品質を予測する方法」を例に統計に触れてみましょう。

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1. はじめに

 ソフトウェア業界に限らず、あらゆる分野でデータは分析されています。例えば、ワイン業界では「味」「香り」「色」などの測定可能な項目を選び、ワインの良否を判定します。統計アレルギーの解消には、身近な分野の事例を考えることも大事です。

 今回は1980〜90年代に世界のワイン業界で大きな話題となった「ワインを飲まずに、ワインの品質を予測する方法」を例に取り、統計のお話をします。

2. ビールとワイン

 「お酒」」と聞いて、ビールを思い浮かべる人も多いでしょう。ビールは比較的安価でガブガブ飲めるため、飲み会の定番といえます。一方、ワインは750ccのボトル1本が数百円から数百万円までと価格帯が異常に広く、スローペースで飲みます。

 飲料としての両者の最大の違いが賞味期限でしょう。ビールは鮮度が命で、賞味期限を9カ月に設定しているものが多いようです(*1)。ビールと異なりワインには基本的に賞味期限が設定されていません(*2)。高級ワインは年がたつと熟成しておいしくなると言われ(*3)、高価になります。この価格上昇を見込み、投機対象として購入する人も少なくありません。

 投機目的でワインを買う人にとって、将来値上がりするワインが分かると、すなわち、価格予測ができると非常に便利です。次節では、実際にある(謎に満ちた)ワインの価格予測法を詳しく説明します。

(*1)民家の冷暗所で10年近く寝かせたビールを何度か飲んだことがありますが、いずれの場合も、泡は少なくなりますが、白い果実系の吟醸香と、紹興酒のような熟成香が出ていて、感動しました。古酒好きの私は1本3000円で買いたいほど。「賞味期限が過ぎたビールは汚れ落としに使える」なんて記事を見ると、もったいなくて涙が出ます。ヨーロッパには、瓶のまま熟成させる「ボトル・エイジド・ビール」があります。
(*2)アイスクリームにも賞味期限は設定されていません。
(*3)古いほどおいしいとは限りませんが、さるシャンパンの蔵元のご招待を受け、2002年から1825年までの22ビンテージのシャンパーニュを試飲したことがあります(蔵元のオゴリでした)。夢に出てくるほど感動したのは1874年物で、「神を見たければ、バッハの『マタイ受難曲』を聞くか、このシャンパンを飲むがよい」と思いました。ギネスブックに載っている世界最古の1825年物は熟成のピークを過ぎていて、ちょっと残念……。

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