OPC UAアプリケーションはどのように開発すべきか:OPC UA最新技術解説(5)(2/2 ページ)
スマート工場化や産業用IoTなどが盛り上がる中で大きな注目を集めるようになった通信規格が「OPC UA」です。本連載では「OPC UA」の最新技術動向についてお伝えします。第5回ではOPC UAアプリケーションの開発について解説します。
OPC UAの開発を支援するコト
次に、OPC UAアプリケーションの開発を支援する「コト」について紹介します。
OPC UAアプリケーションのようなマルチベンダーが提供するコンポーネントがお互いにコミュニケーションを行うソフトウェアを開発する場合、仕様を提供するだけで確実かつ安全に連携が実現できるとは限りません。仕様に対する人間の解釈は統一したものではなく、それぞれの思い込みで開発したもの同士が接続に失敗することは起こり得るものだからです。
OPC Foundationでは、開発中のOPC UA製品を各ベンダーが持ち寄って、実際に接続試験を行う機会としてInteroperability Workshop(IOP)というイベントを実施しています。2019年現在では北米、欧州、日本でそれぞれ年1回開催され、OPC Foundationの企業会員(会員種別の1つ)であれば参加が可能です。
テスト結果は非公開です。開発ベンダーはCTTでの動作確認が行われていれば、開発途中の製品でも持ち込むことができます。実際に、開発環境を持ち込んで、不適合が確認された時点で解析と修正を行って再テストを行うという風景は珍しいものではありません。また、OPC UA製品の開発に携わる開発者同士の交流の場としても貴重な機会を提供しています。
OPC Foundationが提供する製品評価の環境として最も高い信頼性を保証するものが、専用のテストラボで実施する認証テストです。認証テストに合格するとOPC Foundationから認証ロゴが送られます。その製品はOPC FoundationのWebサイトからもユーザーが確認できるので、ユーザーはOPC UA製品の導入検討時に安全性の高いものを選択できます。
先述したIOPが開発途中の製品も持ち込み可能なのとは異なり、認証テストはリリースまたはリリース予定製品が対象となります。認証テストでは、図3で紹介するような多岐にわたるテスト項目が、1週間という期間を目安に行われます。
認証テストでは仕様に単純に準拠しているかの確認のみならず、実運用レベルでの品質と相互運用性を確認します。結果として、認証済みの製品間ではプラグアンドプレイによる相互運用がすぐに行えるようになります。そのため、立ち上げ時間の短縮や、ダウンタイムの圧縮などに効果を生みます。現場での運用コスト削減と安心を確保するためのものといえるでしょう。
最後に――OPC UAの言葉が表すもの
ここまで5回に渡って、OPC UAとは何かということを、技術面からの説明を中心に紹介してきました。約1カ月に1回の定期掲載を進めてきた連載は今回で一区切りとさせていただき、以降は新たなトピックに応じた不定期の連載とさせていただく予定です。
さて、今回の定期連載の締めくくりとして、あらためてOPC UAの名前の由来を紹介します。
「OPC」は、その当時の利用環境に応じて幾つかの変遷がありましたが現在は「Open Platform Communications」を示しています。そして、「UA」は「Unified Architecture」を意味しています。すなわちOPC UAとは「統一した構造によって実現する(UA)、プラットフォーム間コミュニケーションのオープン仕様(OPC)」を表した名称だといえます。
OPC Foundationはその理念を伝えるトレードマークとして「The Industrial Interoperability Standard」を掲げ、そのコミュニケーション仕様を産業分野における相互運用の標準となることを目指しています。これらの言葉が表す意図を、OPCの理念である「つなげる」「安全に」「伝える」そして「活用する」と併せて、この連載の中でお伝えしようとしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
また新しい話題が出てきた場合には、ご紹介の機会を頂けると幸いです。この連載を最後までお読みくださった方々に心からの感謝を申し上げます。ありがとうございました。
著者紹介:
日本OPC協議会 技術部会長 藤井稔久(ふじい としひさ)
日本OPC協議会では技術部会長として国内におけるOPCの普及と維持に努める。OPC UAの国際標準化を審議するワーキンググループ(IEC/SC65E/WG8)の国内委員会幹事を務め、その功績により日本電気計測器工業会の国際標準化作業貢献賞を2014年に受賞。現在も国際エキスパートとして規格化に貢献する。
アズビル株式会社では産業オートメーションシステムのソフトウェア開発に従事し、フィールドバス、分散制御システム(DCS)、製造実行システム(MES)、クラウドアプリケーションに携わる。
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