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ルネサスは「Easy to Develop」に注力、パートナーとの連携で車載半導体

ルネサス エレクトロニクスは2019年10月16日、東京都内で開発者向けイベント「R-Carコンソーシアムフォーラム」を開催した。「Easy to Develop」をテーマに、さまざまなデモ展示を実施。パートナープログラムであるR-Carコンソーシアムの連携を生かしてリファレンスデザインや開発キットを提供し、自動車メーカーやティア1サプライヤーなどが開発期間を短縮できる環境を整える。

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コネクテッドカー向け開発キットを搭載したデモ車両(クリックして拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクス

 ルネサス エレクトロニクスは2019年10月16日、東京都内で開発者向けイベント「R-Carコンソーシアムフォーラム」を開催した。

 「Easy to Develop」をテーマに、さまざまなデモ展示を実施。パートナープログラムであるR-Carコンソーシアムの連携を生かしてリファレンスデザインや開発キットを提供し、自動車メーカーやティア1サプライヤーなどが開発期間を短縮できる環境を整える。

さまざまな領域で開発効率化を

 R-Carコンソーシアムフォーラムの会場では、コネクテッドカーやHMI(ヒューマンマシンインタフェース)、電動車など向けに開発期間短縮に貢献する開発キットを使ったデモを実施した。

 コネクテッドカー向けでは、あおり運転などのイベントをトリガーに、フロントカメラや車両情報といったデータをクラウドに上げるプロセスを実演した。今後、車両にさまざまなセンサーが搭載されると、1日に4TBものデータが生まれるという試算があり、このデータ容量を複数台のクルマからクラウドに送るのは難しい。デモでは、ECU側で画像データなどを一度処理することで、1時間当たり数GBのデータ通信量を数十MBに抑えた。

コネクテッドカー向けのソリューションを搭載したデモ車両。フロントカメラのキット(左)。カメラなど周辺監視用のセンサーを処理するSoC(右)(クリックして拡大)

統合コックピットECU向けリファレンスソリューションのデモ(クリックして拡大)

 HMI関連では、統合コックピットECU向けリファレンスソリューションを展示した。コックピットECUに必要なソフトウェアとハードウェアのパッケージで、アプリケーションの開発をすぐに始めることができる。

 展示したデモの開発期間は3週間だったという。ハイパーバイザーも搭載しており、1つのユニットでインフォテインメントシステム向けの車載Linuxと、メーター向けのGreen Hills SoftwareのリアルタイムOS 「INTEGRITY」を動作させた。Androidも使用可能だという。主なターゲットはティア1サプライヤーで、「性能をどれだけ出せるか分からない段階で、試しに動かして基礎的な評価ができる環境があると役に立つのではないか」(ルネサス エレクトロニクス)。

 自動車メーカーやサプライヤーの開発期間の短縮や開発効率化に向けて、Intersil(インターシル)やIntegrated Device Technology(IDT)とのシナジーを生かしたソリューションも提案していく。例えば、SoCの大規模化によって電源設計が難しくなるが、買収したインターシルのパワーマネジメントICを活用して、R-Car向けに複数の電源や各種監視機能を集積化したソリューションを提供する。最大14セルの電圧を±2mVの精度で測定できるなど高精度を強みにする。「電源とSoCの組み合わせで機能安全をサポートする」(ルネサス エレクトロニクス)。

買収のシナジーを生かした電源ソリューション(クリックして拡大)

 また、ECUの搭載量増加によって複雑化する電源ネットワークの階層化や冗長化もサポートする。現在はリレー、ヒューズからECUにワイヤーハーネスをつなげるが、今後は機能分野ごとのドメインコントロールユニットにインテリジェントパワーデバイスを設け、階層化、冗長化した電源ネットワークに移行するという。これにより、エンジンや電源がオフになった状態の車両に対し、必要なECUだけ起動するといったプログラマビリティが持たせられるという。また、ワイヤーハーネス使用量削減による軽量化や、省電力化も図れる。


電源ネットワークの今後の進化(クリックして拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクス

28nmの次は

 ルネサス エレクトロニクスは、コア事業である車両制御領域での事業基盤強化をベースに、ADAS(先進運転支援システム)やコネクテッドカー向けのSoC(System on Chip)事業を拡大、さらに、E/E(電気電子)アーキテクチャやEV(電気自動車)向けのMSIG(ミックスドシグナルマイコン)事業の成長につなげる。

 今後の開発のロードマップも示した。現在は28nmプロセスのフラッシュマイコンのサンプル評価中で、2022年第1四半期から量産を開始する予定だ。「16nmプロセスの基礎研究も終わりが見えており、次はどうなるかという議論になりがちだが、今は28nmプロセスですらハイエンド側にある。複数の取引先から次のニーズが出て、必要性が成熟するにはしばらく時間がかかるのではないか」(ルネサス エレクトロニクス)。

 R-Carシリーズは、ADAS向け第1弾となるV2Hに続き、周辺監視用フロントカメラ向けV3M、レベル3以上の自動運転システム向けのV3Hを展開し、ラインアップを拡充してきた。現在は完全自動運転に対応する60TOPSのR-Carを開発中だ。また、20TOPSの製品の計画も進めている。「TOPSだけでなく、消費電力当たりのTOPSを追求している。例えばV3Hは、消費電力を4〜5Wに収めながら7TOPSを発揮している。60TOPSの製品はまだ消費電力が高い。水冷にならないシステムで使えるよう開発を進めている」(ルネサス エレクトロニクス)。


ADAS向けR-Carのロードマップ(クリックして拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクス

 また、自動車メーカーと大手サプライヤー、半導体メーカーらが2019年10月に発足させた「Autonomous Vehicle Computing Consortium(AVCC)」にも参加予定だ。社内での手続きを進めている。

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