自動運転時代は車載音響システムも複雑に、「統合化でコスト削減を」:車載ソフトウェア
ブラックベリーは車載音響ソフトウェア「QNX AMP(Acoustic Management Platform)」の最新版「AMP 3.0」の提供を始め。車両内でさまざまなECUやネットワーク配線を用いて構成しているカーオーディオなどの車載音響システムを、1個のSoCで統合管理できるようになり大幅にコストを削減できるという。
ブラックベリー(BlackBerry)は2019年10月8日、東京都内で会見を開き、車載音響ソフトウェア「QNX AMP(Acoustic Management Platform)」の最新版「AMP 3.0」の提供を始めると発表した。車両内でさまざまなECU(電子制御ユニット)やネットワーク配線を用いて構成しているカーオーディオなどの車載音響システムを、1個のSoC(System on Chip)で統合管理できるようになり「大幅にコストを削減できる」(BlackBerry Technology Solutions シニアバイスプレジデント兼共同代表のケイヴァン・カリミ(Kaivan Karimi)氏)という。
AMP 3.0は、カーオーディオをはじめとする自動車に搭載される音響システムを統合的に管理するためのソフトウェア基盤だ。モジュール型の柔軟な構成で、自動車メーカーやティア1サプライヤーは必要な機能のみを有効化できる。従来バージョンでは、カーオーディオなどの中核的な音響機能のみを提供していたが、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転システムなどの搭載拡大に合わせて、差し迫った脅威や車両の状況をドライバーに通知するためのチャイムや安全アラートに対応する機能が追加された。この他にも、包括的なスピーカー管理パッケージも用意している。
ソフトウェアモジュールは5つ。高品質のハンズフリー通話とマルチゾーンの音声認識体験を実現する「QNX Acoustics for Voice(QAV)」、最高品質の車内通信ソリューションを提供する「QNX ICC」、自動車の内部外部騒音を低減しサウンドプロファイルを強化・調整する「QNX Active Sound Design(ASD)」、包括的なスピーカー管理とハイレゾでのメディア再生を可能にする「QNX Software Audio Management(SAM)」、車内の安全上重要なサウンドを対象に、チャイム生成と独自の可聴モニタリングを実現する「QNX Chimes and Safety Alerts(CSA)」だ。
配線、DSP、チューニングなどにかかるコストを削減
カリミ氏は「自動運転時代を迎えて、自動車に搭載される音響システムが複雑化している」と指摘した。カーナビゲーションシステムをはじめとする車載情報機器、テレビやラジオのチューナー、スピーカーを制御するアンプの他、ドライバーにさまざまな情報を伝えるチャイムや警告音など、個別のECUで制御されているという。AMP 3.0を使えば、これら個別のECUから成る複雑なシステムを、1個のSoCで統合制御できるようになる。
統合システムにすることで得られる最大のメリットはコスト削減だ。「ネットワーク配線のムダを省けるようになるし、各ECUに搭載する高価なオーディオ用DSPやチューニングのコストが不要になる。AMP 3.0を用いた統合システムであれば、接続するマイクやスピーカーに合わせた自動チューニングも行える」(カリミ氏)。統合システムに用いるSoCも高性能のものである必要はないという。
また、車載音響システムをソフトウェアベースで構築できるので、普及価格帯の製品から高級オーディオまでスケーラブルにシステムを展開できるというメリットもある。
カリミ氏は「自動車の音響システムは少人数で開発されていることが多く、大きな変化を好まないのは事実だ。しかし、自動運転技術などと同様に、自動車に関わる全てが破壊的に変わりつつある。車載音響システムも例外ではない」と述べている。
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