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品質不正発生に備えた「危機管理」の重要性――レジリエンスを高める事例で学ぶ品質不正の課題と処方箋(5)(3/3 ページ)

万が一、品質リスクが顕在化した場合に備えて危機管理の仕組みを整備しておくことが重要です。危機では複数のタスクが同時多発的に発生する中で、どのような準備ができ、実際の対応にあたる際にはどのようなことに留意すべきなのかを、「レジリエンス」という危機管理のキーワードを用いて解説します。

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3. 円滑に進めるための危機管理体制

 多くの方にとって初めての経験である危機を乗り切るためには、社内の体制だけでなく、弁護士やコンサルティング会社、危機広報PR会社等の外部専門家を活用することも有効です。

 また、不確実な情報が社内外に漏洩することを防止するためにも、社内では「極秘プロジェクト」として組成し、情報を知ったものに対しては、「誓約書等による守秘義務」を課し、情報開示範囲をコントロールすることも重要です。多くの企業では危機管理マニュアル等で定める緊急対策本部に多くの部署が一堂に会して対応するように定められているケースも多いですが、機密事案の場合は得策ではないため、対策本部の組成は柔軟に行えるような仕組みにしておくことをお勧めします。

 自然災害や事故等を想定した事業継続計画(BCP)は多くの日本企業で策定されていますが、不正や不祥事が発生した際の対応マニュアルや緊急時対応体制が確立されている日本企業は多くありません。不正や不祥事が発生した際の、「報告ライン」「緊急対策本部の体制・意思決定プロセス」「関係各部における時系列の行動手順」などを定めた対応マニュアルなどを整備しておくことはいざという時の備えになります。


図4:緊急対策本部のイメージ(クリックで拡大) 出典:KPMGコンサルティング

さいごに

 危機が発生した場合は、「自分がどう行動するのか」「どこまで自主的に考えて行動することができるのか」が重要な要素となります。日頃から指示待ち、やらされ感が漂う会社ではそうした事態を打開することは困難です。「危機はいつ起こるかわからない」ではなく、「危機は常に起こるものだ」という考えを組織の末端にまで浸透させ、平時の業務運営からレジリエンスを意識した組織へと変革していくことが重要であると考えます。本稿が危機に対するマインドセットの切り替えを行い、「危機や環境変化に打ち克ち、それを糧に成長できる組織の力」向上の契機になれば幸いです。

筆者紹介

土谷 豪(つちや ごう)
KPMGコンサルティング シニアマネジャー

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金融系事業会社でリスク管理、危機管理、BCP対応等を経験し、2013年にKPMGビジネスアシュアランス株式会社(現KPMGコンサルティング)入社。企業のリスク管理体制構築や危機管理体制、事業継続計画策定支援のプロジェクト等に多数従事。特に直近では、製造業の品質不正対応の調査業務やグローバル製造業のサプライチェーンリスク管理に関する対応に注力。


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