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SiCやGaNスライス工程の生産性を60%改善、三菱電機のマルチワイヤ放電加工機金属加工技術(2/2 ページ)

三菱電機は2019年9月12日、新開発のマルチ放電スライス技術「D-SLICE(ディースライス)」を採用したマルチワイヤ放電スライス加工機「DS1000」を同年11月1日に発売すると発表した。SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)など次世代半導体材料のウエハースライス工程での活用を提案する。

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素材活用率で20%、生産性で60%の向上を実現

 この新技術「D-SLICE」を活用した初のマルチワイヤ放電スライス加工機が「DS1000」である。「DS1000」は半導体基板の製造工程において、SiCやGaNなどの次世代材料のスライシングだけに特化した放電加工機である。

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「DS1000」でスライスした加工の様子(クリックで拡大)

 次世代半導体材料を同時に20枚スライスすることが可能である。ワイヤの間隔を最小600μmで周回させることが可能で、素材の有効活用率を20%向上できたという。さらに非接触加工により、材料割れや表面ダメージを抑制し、歩留まりをワイヤソーに比べ従来比40%改善できたとする。

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ワイヤソーと放電スライスの比較(クリックで拡大)出典:三菱電機

 これらの技術を実現できたブレークスルーとなったのがマルチワイヤの放電制御技術である。マルチ放電加工電源として、ワイヤ1本1本に電源を設置し、それぞれを厳密に制御することで、複数ワイヤの放電をコントロールし、高い加工精度や加工速度を実現できたという。

 電源の数が増加すれば消費電力量も増えそうだが「各電源を制御し使用しなかった電力については回生させることで省エネ化を実現している」(佐藤氏)。ワイヤソーであればダイヤモンド砥粒を付けたワイヤを活用しているが、放電加工では安価なワイヤで可能であるため、省エネ化と材料費を合わせたランニングコストはワイヤソーに比べて80%削減できたとしている。「用途が限定された製品であるので、大きな台数を想定はしていない。まずは国内から販売を開始し年間10台の販売を目指す」と三菱電機 FAシステム事業本部 産業メカトロニクス事業部長 氷見徳昭氏は語っている。

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マルチ放電加工電源方式の仕組み(クリックで拡大)出典:三菱電機

e-F@ctoryと組み合わせ消耗品の保全なども実現

 今後はこれらの機器単体の価値に加えて、同社が推進するスマート工場コンセプト「e-F@ctory」の中に組み込み、消耗品であるワイヤの予防保全など、ライン全体の連続運転実現などに貢献するさまざまなソリューションを展開していく方針も示している。

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IoTなどを活用しスマート工場化を推進(クリックで拡大)出典:三菱電機

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