SiCやGaNスライス工程の生産性を60%改善、三菱電機のマルチワイヤ放電加工機:金属加工技術(1/2 ページ)
三菱電機は2019年9月12日、新開発のマルチ放電スライス技術「D-SLICE(ディースライス)」を採用したマルチワイヤ放電スライス加工機「DS1000」を同年11月1日に発売すると発表した。SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)など次世代半導体材料のウエハースライス工程での活用を提案する。
三菱電機は2019年9月12日、新開発のマルチ放電スライス技術「D-SLICE(ディースライス)」を採用したマルチワイヤ放電スライス加工機「DS1000」を2019年11月1日に発売すると発表した。SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)など次世代半導体材料のウエハースライス工程での活用を提案する。
加工が難しいSiCやGaNをどうスライシングするか
SiCやGaNは、パワー半導体、通信デバイス、レーザーダイオード、LED素子などに採用され、省エネなどが要求される家庭用電気機器、産業用機器、鉄道車両、自動車、太陽光発電システムなどさまざまな領域で活用されている。省エネ性が今後あらゆる領域で求められるようになる中で、SiCやGaNの使用はさらに広がる見込みだが、一方でこれらの材料は加工が難しく、生産性が上がらないという課題があった。
今回の新製品は、三菱電機が以前から展開してきた放電加工機の技術力を生かし、半導体基板の製造工程におけるSiCやGaNのウエハースライス工程の大幅な生産性向上を目指したものである。
半導体基板の製造工程では、半導体材料の結晶体を熱処理したインゴッドを、1枚1枚のウエハーに切る「スライシング」という工程が存在する。従来の主要な半導体材料であるシリコン(Si)は柔らかい素材であるために加工が容易で、ワイヤで切るワイヤソーを活用するケースが多かった。しかし、SiCは高硬度、GaNは高脆性、へき開性(特定方向に割れやすい性質)などの特性を持つために、従来のワイヤソーでの加工では歩留まりが悪くなり、結果として生産コストが高止まりするという状況が生まれていた。
今後SiCおよびGaNの低価格化に向けウエハーサイズの拡大が現在進められているが「大型化すればするほど、加工の難易度は上がり、スライス加工がボトルネックになる可能性もある。これらを改善する提案として放電加工技術を提案する」(三菱電機 FAシステム事業本部 名古屋製作所 放電製造部長 佐藤清侍氏)。
新技術「D-SLICE」は、ワイヤ放電加工技術とマルチワイヤ制御技術を組み合わせ、放電加工によりマルチワイヤソーのようなスライシングを可能としたものだ。マルチワイヤによる放電加工でスライシングしウエハーを切り出していく。SiCやGaNなどの難削材の加工を容易に行える他、放電加工の特徴である非接触加工により加工溝幅を最小化することが可能となる。また砥粒も不要になるためランニングコストも低減可能である。
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