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工作機械の共通インタフェース「umati」とは何か?いまさら聞けないumati入門(1)(5/5 ページ)

工作機械のスマート化に向けて注目されている通信規格が「umati」である。本連載では「umati」とはどういう規格なのか、技術的にはどういう背景があるのか、どのような活用シーンがあるのかについて、紹介する。第1回となる今回は「umati」とは何かをテーマに概要を取り上げる。

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umatiで変わるモノづくりの未来

 最後に、umatiを用いたデータ通信の周期は1Hz、つまり1秒に1回程度のデータ収集を想定したものだということを付け加えておきたい。工作機械の運転状態の監視や加工履歴、工具使用時間の管理には十分であるが、ミリ秒(ms)やマイクロ秒(μs)といった周期の制御情報はumatiで取り扱う対象のデータではないということに注意が必要だ。

 また、現時点の仕様では、データの流れは下流となる工作機械から上流となるシステムへの一方通行となっている。上位のシステム側からumatiを用いて機械のスタートやストップなどの指令を行うことは想定されてはいない。機械の現在の稼働情報を読み取ることだけを目的としている。将来的には拡張の可能性もあるとのことだが、当面は更新周期1秒での工作機械の状態監視に焦点を当てるのがよいだろう。

 それだけでも今後のモノづくりに対する影響は大きいと予想されている。なぜならumatiは、VDMA(ドイツ機械工業連盟)が推進している射出成形機向けの共通インタフェースEUROMAPなどと並んで、ドイツのインダストリー4.0において期待されている管理シェルの1つの実現例でもあるからだ(※)

(※)関連記事:工場の「つながる化」を可能とする「管理シェル」とは何か

 中立性の高い体制の中で、主要な工作機械メーカーと制御装置メーカーを上手に取り込んで策定を進めているumatiは、正式リリース後には製造現場に着実に浸透していくと考えられる。普及が進めば進むほど、umatiに未対応の機械はユーザーの選定から外れてしまうため、工作機械メーカーの各社はumatiへの対応を進めていかざるを得ない可能性が高い。これにより現在、工作機械がデータ通信などで使っているメーカー独自の専用プロトコルやデータフォーマットは、内部的に使用されるだけにとどまり機器間の接続に用いられることは少なくなっていくだろう。一方で、上位側のシステム、例えば生産管理ツールやIoTプラットフォームなどもumatiへの対応が必要となってくるはずだ。

 そして何よりもその恩恵を受けるのが、工作機械を使い加工を行うユーザーである。もちろん工場内にある全ての工作機械がumati対応するのはまだ相当な時間がかかると見込まれているが、将来的にはumatiの制定により全ての機械を監視し生産を自在にコントロールするスマートファクトリー化に大きく貢献することだろう。これらにより、モノづくりの生産性向上につながっていくものと確信している。


 第1回は「umati」の概要について紹介した。第2回では「umati」の次の大きなターニングポイントとなる国際工作機械見本市「EMO2019」での「umati」の出展状況や技術的な進展などについて紹介する。

≫連載「いまさら聞けないumati入門」の目次


著者紹介:

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高口順一(こうぐち じゅんいち) 
ベッコフオートメーション ソリューション・アプリケーション・エンジニア

 東京大学工学部を卒業後、ものづくりコンサルティングファームに入社。2005年には「金型生産工程の超短納期化の実現」にて第1回ものづくり日本大賞 経済産業大臣賞を受賞。その後、工作機械メーカーを経て、2015年にPC制御に特化したドイツの制御装置メーカーであるベッコフオートメーション株式会社に入社。ソフトウェアPLC/CNCであるTwinCATの技術を担当しその普及に努めている。



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