パナソニックが世界最高輝度の4Kプロジェクターを投入、生産拠点の門真工場も公開:イノベーションのレシピ(2/2 ページ)
パナソニックは2019年9月6日、業務用3チップDLP(Direct Light Projection)プロジェクターの新製品「PT-RQ50KJ」を同年12月から発売すると発表した。同製品は4K(4096×2160)プロジェクターとして、世界最高(同社調べ)となる5万ルーメンの最大輝度を誇る。
フィンレスラジエーターで冷却能力を30%向上
また、同機種ではコンパクトな一体型設計を採用した。従来機種と比較して光源出力を2倍とするとともに放熱性も2倍に増強。レーザー用電源のスペースも半減させた。これにより、最大輝度5万ルーメンを達成しつつも、従来機種(PT-RQ32KJ)とほぼ同等の設置面積を実現した。また、プロジェクターの基本設定をスマートフォンから転送する「NFC機能」やエラー表示をリアルタイムに確認できる「インフォメーションモニタ」など、現場のワークフロー効率化を支援する技術も盛り込んだ。
独自の冷却システムではほこりが溜まらないフィンレスラジエーターを採用し、冷却能力が30%向上した。従来のプロジェクターでは、レーザーと蛍光体を同一系統で冷却していたが、同機種は青色レーザー、赤色レーザー、蛍光体でそれぞれ別の系統として冷却を制御しているという。また、光学ブロックは完全密封として2万時間の長寿命化を実現した。
PT-RQ50KJはオープン価格(投写レンズは別売り)で、市場想定価格は4000万円(税別)。年間50台の販売目標を掲げる。同機種をけん引役として、パナソニックは2万ルーメン超プロジェクターの国内市場において、2020年度に販売金額ベースで75%のシェア獲得を目指す。
業務用プロジェクター生産拠点も公開
また、パナソニックは業務用プロジェクターを生産する門真工場(北門真、大阪府門真市)の見学会を開催。生産工程や検査工程、品質保証体制の一部を報道陣に公開した。
同社は門真工場の他、中国に2カ所のプロジェクター生産工場を持つ。門真工場ではハイエンド製品である3チップDLPプロジェクターを中心に、セル生産方式で受注に応じて製品の製造を行っている。中国の工場では液晶プロジェクター、1チップDLPプロジェクターの生産を担当する。
見学時に生産されていたPT-RQ32Kは、ビスを除いて約1500アイテムの部品から構成される。これら部品はキット化され、ユニット部品として組み立てられる。特に、ほこりの侵入が許されない部品もあるため、これらユニット部品の組み立ては局所クリーン装置内で行われる。完成したユニット部品は最終組み立て工程に運ばれ、1人の技術者が約100分で最終製品へと組み上げる。
完成した最終製品は初期エージングの後、熟練の技術者によって光軸やホワイトバランスなど光学ユニット調整を行う。その後、さまざまな検査パターンを投写し、熟練技術者が目視で色味やフォーカス、コンバージェンス、ほこりの侵入有無などを確認する。投写する検査パターンは「過去に発生した不良から知見を得て作製したもの。パターンの1つ1つにこだわりがある」(パナソニック担当者)とする。
品質保証に関しては、信頼性試験の中でも寿命試験、振動・落下試験、ほこり試験の様子を公開した。寿命試験は投写状態でさまざまな設置状態に置き、設計寿命やライフサイクルの確認を行う。振動・落下試験は、機器輸送時における振動、落下への耐性を確認する。ほこり試験では、プロジェクターの大敵であるほこりの光学系への侵入を確認するため、独自の「ほこり試料」を開発。ほこりが舞う環境に投写状態の装置を設置し、ほこりの侵入状況をチェックする。
工場の自動化が進む中でも、プロジェクターを含めた光学製品は「人間のすり合わせ技術が残っている」(パナソニック担当者)。プロジェクターの開発で30年の歴史を有するパナソニックは、匠がそろう門真工場をけん引役としてさらなる成長を狙う。
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