DXの国内動向調査、半数以上の企業でビジネス戦略とDX戦略に隔たり:製造マネジメントニュース
IDC Japanは、国内企業を対象としたDXの動向調査結果を発表した。国内企業のDXへの取り組みは、より現実的な目標に向かっているが、効果を実感していない企業も多く、DXプロジェクト、システム間の連携も道半ばだ。
IDC Japanは2019年8月29日、国内企業を対象としたデジタルトランスフォーメーション(DX)の動向調査結果を発表した。国内企業のDXへの取り組みは、より現実的な目標、業務上の課題解決に向けたものとなっている一方で、その効果を実感していない企業も多く、DXプロジェクト、システム間の連携も道半ばであると分析する。
IDCは同年7月に、DXに取り組む国内企業150社を対象にDXの動向調査を実施。DXとビジネスとの連携、推進上の課題、DX実現のIT基盤などを幅広く聞いた。このうち、国内企業のDX戦略については、ビジネスの戦略と強く結びついた長期的なものとした回答が43.4%と半分を下回り、DX戦略とビジネス戦略の間に乖離がある企業がまだ多いという、2018年の調査と同様の結果となった。
一方、DX推進の際の優先事項、目的を聞いた結果では、製品、サービス開発業務の卓越性、人材の卓越性などが上位に挙がった。2018年の調査ではデータの資本化、収益化が1位だった結果と比較すると、国内企業のDXはより現実的な課題解決に向けた目標に移行しているとみる。
DXの売上、利益に対する影響を聞いた質問では、「現時点ではDXによる売上、利益増加の効果は見えていない」とした回答が最多で、37.3%に上った。これに「財務的なインパクトを測定していない」とした割合を合わせると、半数の企業で実際のビジネスに対するDXの効果が見えていないことが明らかになった。
さらにDXの課題として、DXのプロジェクトが社内でバラバラに行われていることや、複数のDXシステム間の連携がないことを挙げた。「DX戦略とビジネス戦略との乖離」とも合わせると、国内企業ではDXが全体最適の下で行われておらず、結果として財務上の結果に結びついていないと分析した。
また、DXシステムと既存の情報システムとの連携が弱い企業が多く、経済産業省が「DXレポート」の中で警鐘を鳴らした「2025年の崖」の危険性が多くの企業で存在しているとも推定した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 経産省がデジタル変革の指標を公開、企業に自己診断促す
経済産業省は、デジタル経営改革のための評価指標「DX推進指標」を公開した。各企業がデジタル経営改革の推進に対する簡易的な自己診断を行うことを目的とする。 - 顧客のDX実現を全てサポート、富士通がデータ×AIを描く
富士通は2019年5月14日、顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)実現をデータとAI(人工知能)活用で支援するプロセスとフレームワーク「Design the Trusted Future by Data × AI」を発表した。同プロセス・フレームワークを用いたサービス提供は2019年7月にグローバル展開を開始する予定だ。 - 経産省、攻めのIT活用に取り組む企業29社などを発表
経済産業省は「攻めのIT経営銘柄2019」企業29社と「IT経営注目企業2019」20社を選定した。「DX推進ガイドライン」に基づいて、経営層の強い責任のもとでDXを推進する企業を高く評価した。 - 第2の創業期迎えたキヤノンITS、「2025年の崖」はホップステップジャンプで克服
キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)が新たな経営体制や今後の事業目標などについて説明。新社長の金澤明氏は「当社は、現在第2の創業期、成長期に入っている。今後は、規模と利益の両方を追求し、キヤノンMJグループのITソリューション戦略の中核的役割を担っていく」と意気込む。 - 製造業デジタル変革による競争力強化支援プログラムを提供
横河ソリューションサービスは、三菱総合研究所と進めてきた「ものづくり競争力強化支援事業」の協業範囲を拡大し、新たに「製造業DXトータルサポートプログラム」の提供を開始する。 - 国内企業のデジタルトランスフォーメーション成熟度が1年で1段階上昇
IDC Japanは、国内デジタルトランスフォーメーション(DX)成熟度に関するユーザー調査結果を発表。前回の調査結果に比べて成熟度が大幅に向上したものの「多くの企業では、短期的かつ従来のビジネスの効率化が中心で、革新的な製品やサービスの創出に向けた顧客エクスペリエンスの強化とエコシステムへの拡大が不可欠だ」(同社)という。